外部の協力者にストックオプションを付与したいのですが、税制適格にできますか。
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1 はじめに
企業がキャッシュアウトを抑制しながら優秀な人材を集めるために、ストックオプションとして新株予約権を付与することは有力な方法です。
ただし、税制適格ストックオプションとして付与しなければ、従業員側に十分なメリットを享受させることができません。
税制適格ストックオプションの課税関係の概要は、Q&A「ストックオプションの課税関係」のとおりです。
(https://www.clairlaw.jp/qa/corporationlaw/stockoption/stockoption01.html)従来は、役員・従業員以外の外部協力者に付与するストックオプションを税制適格にすることはできませんでした。
しかし、令和元年の小企業等経営強化法の改正により、税制適格の対象が追加され、従業員や役員以外の外部協力者に付与するストックオプションも税制適格にできるようになりました。
例えば、弁護士等の専門家に対して現金ではなくストックオプションを報酬として付与することができます。2 外部協力者に税制適格ストックオプションを付与する条件
従業員や役員以外の外部協力者に付与するストックオプションが税制適格となる場合の条件は以下のとおりです。
①外部協力者が社外の高度人材である特定従事者であること
②会社が一定の条件を満たすこと
③会社が社外高度人材活用新事業分野開拓計画の申請をし、その認定を受けること
④会社が社外高度人材活用新事業分野開拓計画を実施し、計画の実施等について適切に報告すること3 ①外部協力者が社外の高度人材である特定従事者であること
外部協力者が以下の①から⑥のいずれかの条件に適合する必要があります。
これらはそれぞれ確認書類によってその条件に適合することを証明する必要があります。
(経済産業省「社外高度人材活用新事業分野開拓計画策定の手引き」令和元年7月16日版)。①国家資格を有し、当該資格に関する3年以上の実務経験がある者
②博士の学位を有し、研究、研究の指導、教育に関する3年以上の実務経験がある者
③高度専門職の在留資格をもって在留し、当該専門性に関する3年以上の実務経験がある者
④上場会社の役員(取締役、会計参与、監査役、執行役)として3年以上の実務経験 がある者
⑤将来において成長発展が期待される分野の、先端的な人材育成事業に選定され、従事していた者
⑥社外高度人材活用新事業分野開拓計画を開始する日から遡った10年間に、日本の 公私の機関で製品または役務の開発に2年以上従事し、かつ以下のいずれかに該当する者
ア.上場企業で製品または役務の開発に従事した場合
従業員であって、開発した製品または役務の売上高が、開発に従事していた期間の開始時点に対し終了時点で全事業の売上高の1%未満から1%以上まで増加した
イ.上場企業以外で製品または役務の開発に従事した場合
(1)従業員であって、製品または役務の開発に従事していた期間の開始時点に対し終了時点で、所属していた機関の全事業の売上高が100%以上増加した
(2)従業員又は外部協力者であって、開発した製品または役務の売上高が、開発に従事していた期間の開始時点に対し終了時点で100%以上増加した4 ②会社が一定の条件を満たすこと
会社が以下(1)(2)に定める事項を踏まえて、条件に適合するかを判断します。
(1)会社の資本金額、設立からの年数、従業員数等の条件
ただし、業種により、条件が変わるため、以下ではすべての条件を示していません。
会社の業種や状況を踏まえて適用条件を満たすかどうかを確認する必要があります。
なお、以下では様々な条件が定められていますが、資本金が10億円以下で設立から5年未満であり、従業員数が2000人以下であれば、業種にかかわらず、(1)の条件は満たすことになります。・資本金額・常時使用する従業員の数
業種により条件がかわりますが、少なくとも資本金額が10億円以下であることは必要です。
また、ベンチャー企業ではあまり問題はないところですが、常時使用する従業員数が2000人以下であることも必要です。・設立からの年数
業種により条件が異なりますが、少なくとも会社設立から10年未満であることが必要です。・従業員数
業種により条件が異なりますが、少なくとも2000人以下である必要があります。(2)VC等から出資を受けていること
これまでに、VCやCVCから出資を受けていることが必要です。
また、最初にVC又はCVCから出資を受けた際の資本金額が5億円未満、かつ常勤従業員の数が900人以下であったことも必要です。5 ③会社が社外高度人材活用新事業分野開拓計画の申請をし、その認定を受けること
主たる事務所の所在地を管轄する経済産業局長あてに、申請書類(申請書のほか、外部協力者との業務委託契約書、外部協力者の各種証明書、本人確認書類等)を提出し、社外高度人材活用新事業分野開拓計画の認定を受けます。
申請書類に不備がなければ、受理日から概ね45日以内に認定される、とアナウンスされています。6 ④会社が社外高度人材活用新事業分野開拓計画を実施し、計画の実施等について適切に報告すること
会社は、認定を受けた後も、以下の事項を報告することが必要です。
・認定計画の期間中の各事業年度終了後3月以内に、主務大臣に対し、社外高度人材を活用していることを報告すること。
・各事業年度終了後3月以内に、同期間中に、社外高度人材が引き続き日本国内の居住者であることを報告すること。
・以下の場合、都度その旨を報告すること
ア 社外高度人材活用新事業分野開拓計画に従って付与される新株予約権の権利行使期間が終了した場合
イ 当該新株予約権が全て行使された場合
ウ 社外高度人材が国外転出を行った場合7 最後に
以上のような手続きを踏めば、外部協力者に付与するストックオプションを税制適格にすることができます。
最近では、有償ストックオプションを活用した、ストックオプションを信託する方法等によって、外部協力者にも課税関係で不利益を負担させずにストックオプションを付与するスキームも少しずつ広まってきています(信託型ストックオプション)。
Q&A「信託型ストックオプションとは」
(https://www.clairlaw.jp/qa/corporationlaw/stockoption/post-103.html)それぞれの方法のメリット・デメリットを踏まえて、自社に合った方法をご検討ください。