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未上場会社である当社の株主総会の運営方法(全体的な流れ・開会まで)を教えてください。

会社法 株主総会

東京地方裁判所の商事部に継続する案件には、未上場会社の親族間対立や少数株主との関係悪化を背景として、株主総会の運営手続のミスによる無効や取り消しを主張するものが少なくありません。本稿では、実務の現場で迷いやすい「当日の運営フロー」と「開会までのポイント」に絞って解説します。
本稿では「株主総会の運営(1)」として、全体的な進め方、開会に至るまでの運営について解説します。 

第1 全体的な流れ

株主総会は以下のような流れで進みます。
事務局による定足数の充足について確認
②開会、定足数の充足について議長による確認
③報告事項・決議事項の上程
④決議
⑤閉会

第2 議長

1 議長の選任と役割

株主総会の議事進行は、議事を公正・円滑に運営する職責を有する「議長」が行います。
多くの企業では、定款において「代表取締役」や「社長」等が議長となると定められています。
定款に定めがない場合は、株主総会の場で選任することになります。 

2 議事の進行

議長には、会社法上、強力な権限が付与されています(会社法第315条第1項)。
議長は、その命令に従わない者や、その他株主総会の秩序を乱す者を退場させることができます(会社法第315条第2項)。
実務上、議長は株主総会が公正かつ円滑に運営されるよう議事を進め、不規則発言等により議事を妨害する株主に対しては注意喚起を行うなど、適切な進行管理を行うことが求められます。 

第3 審議方式の選択

株主総会においては、報告事項の報告、決議事項(議案)の上程・説明、質疑応答、採決といった審議の一連のプロセスを欠落なく行う必要があります。 

1 2つの審議方式

審議方式には、主に以下の2種類があります。

(1)個別審議方式

目的事項(報告事項および決議事項)ごとに、「上程・説明→質疑応答→採決」を繰り返して進める方式です。
通常の会議形式に近く、進行が分かりやすいメリットがあります。
他方、質問が多い場合は総会が長時間化するリスクがあります。 

(2)一括審議方式

複数の目的事項について、まとめて「上程・説明」を行い、その後に「一括して質疑応答」を行い、最後に順次「採決」を行う方式です。
質問を一度の機会にまとめて受け付けるため、議長がシナリオ通りの進行を行いやすいという利点があり、参加株主数が多い場合などには特に採用するメリットがあります。 

2 審議方式の決定権限

いずれの審議方式を採用するかは、議長の裁量に委ねられていると解されており、議長は議場に諮ることなく、決定することができます。 
もちろん、念のため議場に諮り、出席株主の過半数の賛同を得てから進行する例も多く見られます。 

第4 開会

定刻になった際、議長は開会を宣言し、開会します。
併せて以下の事項を報告することが一般的です。
 議長就任の宣言
②株主の発言ルールの説明
③役員の出席状況
④株主数および議決権数(定足数の充足状況)

第5 具体的なQA

1 開催前にやむを得ず会場場所等を変更することができるか。

災害が発生した場合などは、状況が許せば決議事項だけを済ませる方法もありまうが、そうでない場合会場変更や時刻変更を余儀なくされる場合があり得ます。
法令上、招集手続をやり直すのが原則ですが、会場を変更しなければならない「やむを得ない理由」があり、かつ株主に周知徹底して誘導するなど万全の措置を講じるのであれば、当日の変更であっても有効と考えられます。
なお、日程自体を変更する場合は、改めて招集手続を行う必要があります。 

2 株主総会の最中に休憩ができるか。

株主総会が長時間になった場合など、休憩をとることが考えられます。
短時間の中断で済む場合は、議長の裁量判断で「休憩」を挟むことが可能です。 

3 株主総会を延期又は続行ができるか。

株主総会が即時に決議を行って終了させることができない状況があれば、「延期」または「続行」の決議を行うことが考えられます(会社法第317条)。
「延期」とは、議事に入らないで別途の会日に変更することをいいます。
また「続行」とは、議事に入った後、審議を一時中断して別途の会日に継続することをいいます。
これらの決定は株主総会の普通決議(会社法第309条第1項)によります。
日時・場所の決定を議長に一任する決議も可能と解されています。
この延期や続行を決議する場合、改めて招集手続(会社法第298条・第299条)をすることは不要です。 

 

回答者

中野 友貴

得意な英語も活かしながら、グローバルに展開するアントレプレナーのヴィジョンを 最も効率良くに実現することができるように、 日々、ビジネスセンスを踏まえた熱いリーガルサービスを行っています。

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中野 友貴
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