第1 はじめに
医薬品や化粧品を販売するために商品の案内ページや、口コミ等を掲載することが一般的です。
このような表示は広告として一定の規制に服します。
本記事では、主に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「薬機法」といいます。)における広告規制を中心に、企業や事業者の皆様が留意すべき点を解説します。
第2 薬機法の概要
薬機法は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保、保健衛生上の危害の発生・拡大防止等を目的としています(薬機法第1条)。
この目的のため、製造から販売、広告に至るまで様々な規制を定めています。
薬機法上の「医薬品」とは、疾病の診断・治療・予防等に使用される物や、身体の構造・機能に影響を及ぼす物(機械器具等を除く)を指します。
「化粧品」は、人の身体を清潔・美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚・毛髪を健やかに保つために使用される物で、人体への作用が緩和なものです。
第3 広告規制の概要(薬機法における広告の考え方)
1 広告
薬機法では、判例や行政通知に基づき、以下に該当するものを「広告」と位置付けています。
(1)顧客を誘引する意図が明確であること
(2)特定の商品名が明らかにされていること
(3)一般人が認知できる状態であること、の3要件を満たすものと解されています。
これらに該当すれば、媒体を問わず薬機法の広告規制対象となります。
規制対象は製造販売業者等に限らず、広告に関与する全ての者(広告代理店、メディア、インフルエンサー等)に及ぶ可能性があります。
2 主な広告規制
主な広告規制は以下の通りです。
(1)誇大広告等の禁止(薬機法第66条)
医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関し、虚偽・誇大な記事を広告・記述・流布することは禁止されます(同条第1項)。
医師等が保証したと誤解させるおそれのある記事の使用も禁止です(同条第2項)。
(2)特定疾病用の医薬品の広告の制限(薬機法第67条)
がん等特定疾病用の医薬品は、原則として一般向けの広告が制限されます。
(3)承認前の医薬品等の広告の禁止(薬機法第68条)
国内未承認・未認証の医薬品等に関する広告は禁止されています。
3 「医薬品等適正広告基準」等の行政指針
上記の薬機法の規制のほか、「医薬品等適正広告基準」等の指針も公表されていますので、それらも遵守する必要があります。
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第4 具体的な注意点の例
1 医薬品の広告規制
(1)効能効果の表現
承認された範囲を逸脱せず、効果を保証する表現や最大級表現(例:「最高の効果」)は避けなければなりません。
(2)安全性の表現
副作用がないかのような表現や、安全性の過度な強調は不適切です。
(3)使用体験談・ビフォーアフター
個人の体験談を客観的な効果のように用いることは原則禁止です。ビフォーアフター表現も効果の不当な暗示に注意が必要です。
(4)医療関係者の推薦
医師等が推奨していると誤解させる広告は禁止されています。
2 化粧品の広告規制
(1)効能効果の範囲
化粧品が広告できる効能効果は、いわゆる「化粧品等の適正広告ガイドライン」等で定められた56項目の範囲内です。
これを超え、医薬品的な効果(例:「シミが消える」「アンチエイジング」)を標榜することはできません。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jcia.org/user/common/download/business/advertising/JCIA20200615_ADguide.pdf
(2)「医薬部外品(薬用化粧品)」との違い
薬用化粧品は特定の有効成分による効果を訴求できますが、医薬品のような治療効果は標榜できません。
(3)使用感・イメージ表現
使用感やブランドイメージの表現は可能ですが、効能効果と誤認させないよう注意します。
(4)安全性の表現
「無添加」等の表示は、具体的内容を明示し、安全性を保証するものではないことを理解する必要があります。
3 共通の注意点
(1)打ち消し表示
「※個人の感想です」等の表示は、消費者が容易に認識できるよう明瞭に記載する必要があります。
(2)景品表示法との関係
薬機法に加え、景品表示法による優良誤認表示・有利誤認表示の規制も受けます。
(3)違反した場合の措置
行政指導、措置命令、課徴金納付命令、刑事罰の対象となり得ます。
4 広告審査体制の重要性
薬機法の規制は日常生活ではイメージしづらく、意外な抵触があり得るところです。
社内での広告審査体制を整備し、法務・薬事部門が連携してチェックすることが不可欠です。