第1 はじめに
フランチャイズ契約とは、フランチャイザー(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)に対し、自己の商標や確立された経営ノウハウの使用を許諾し、その対価として加盟店が加盟金やロイヤルティを支払う事業契約です。
加盟店は、フランチャイザーのブランド力を利用して未経験からでも事業を始めやすいメリットがある一方、フランチャイザーの運営方針に従う必要があり、経営の自由度が制限されるといった側面も持ち合わせています。
このようなフランチャイズ契約は、フランチャイザーとフランチャイジーのお互いの利益のために行っている事業であるので、終了することが難しい場合があり得ます。
【中小企業庁(フランチャイズ事業を始めるにあたって)】
https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/download/21fyFranchiseStart.pdf
第2 契約期間満了と更新
1 フランチャイズ契約と自動更新
フランチャイズ契約には通常、契約期間が定められています。
ただし、フランチャイズ契約は、長期間にわたって継続されることが想定されることが多いため、自動更新条項等が付されていることが通常です。
この場合、期間満了時に、更新拒絶できるのかどうかが争点となることがあります。
2 更新拒絶
契約書に「期間満了の●ヶ月前までに意思表示がなければ自動更新する」といった条項がある場合、フランチャイザーがその条項に従って更新を拒絶することがあります。
しかし、フランチャイジーは多額の投下資本の回収を期待して事業を行っているため、一方的な更新拒絶が制限されることがあります(民法第90条)。
たとえば、従前から更新が当然にされることが明示又は黙示に合意されていた場合や、更新拒絶に合理的な理由がない場合には契約書の記載にかかわらず、制限される恐れがないかを注意することが必要です。
第3 契約期間中のフランチャイザーからの解除
1 解除の基本
フランチャイズ契約の途中で、契約を終了することを希望するケースもあり得ます。
民事法では、ロイヤリティの不払い等の債務不履行がある場合の解除の要件が定められていますので、法律に基づいた解除をすることがあり得ます。
また、フランチャイズ契約の多くは、中途解除に関する条件が定められており、契約に基づく解除も検討されます。
フランチャイズ契約のような継続的契約では、解除の効力は過去に遡らず、将来に向かってのみ生じると解されています。
2 フランチャイザーが解除できる場合
多くのフランチャイズ契約には、フランチャイジーの義務違反を理由とするフランチャイザー側の解除条項が詳細に定められています。
しかし、形式的に解除事由に該当すれば直ちに解除が認められるわけではありません。
フランチャイズ契約のような継続的契約においては、信頼関係破壊の法理 が適用され、契約書上の解除事由に該当する行為があっても、それが「当事者間の信頼関係を破壊し、契約を継続し難い」といえる程度のものでなければ、解除は認められないと評価される場合があります。
第4 フランチャイジーからの解除
1 法定解除
フランチャイジーは、任意解除をするのでなければ、フランチャイザー側の債務不履行を理由とする法定解除によります。
つまり、フランチャイザーの債務不履行を特定し、立証する必要があるところです。
2 任意解除
(1)任意解除の可否
フランチャイジーがその都合により契約期間満了前に解約(中途解約)する場合、フランチャイズ契約書の定めに従う必要があります。
多くの場合、中途解除に関する違約金(解約一時金)の支払いが規定されます。
(2)中途解約違約金の有効性
この違約金は、ロイヤルティ収入の逸失利益の補填や、ブランド全体の信用の維持などを目的としており、契約書に定めがあれば支払義務を負うのが原則です。
しかし、その金額が社会通念に照らして著しく高額である場合や、フランチャイジーの解約の自由を極端に制限するような場合には、公序良俗(民法第90条) に反して無効と判断される可能性があります。
第5 合意解約
合意解約は、フランチャイザーとフランチャイジーが話し合い、合意によって契約を終了させる方法です。
この方法であれば、フランチャイズ契約の定めにかかわらず、柔軟に条件を調整して解約でき、紛争の円満な解決を図ることができます。
合意解約の際には、後々のトラブルを防止するため、解約の条件を定めた解約合意書を作成することが極めて重要です。