目次
1.はじめに
令和7年4月1日から、職業安定法に基づく指針が一部改正され、お祝い金規制(求職者への金銭やギフト券等の提供)の禁止が強化されることになります。
従来より、職業紹介事業者は求職者に対する金銭提供が制限されていましたが、今回の改正により、募集情報等提供事業者(求人サイト・求人情報誌などにより求人・求職の情報を提供する事業者)にも同様の規制が適用されることになります。
本稿では、職業紹介の紹介お祝い金規制についてについて解説します。
2.お祝い金規制とその目的
規制の概要
お祝い金規制とは、職業紹介事業者や募集情報等提供事業者が、求職者に対し、就職の対価として金銭やギフト券等の経済的利益を提供することを原則として禁止する制度です。
これまでは、多くの職業紹介事業者が、職業紹介事業などを使用して就職ができた場合には「就職お祝い金」などの名目で金銭やギフト券などを求職者に付与することとしていました。
しかし、職業紹介事業者が、ある会社に紹介した就職者に対し、更に他の会社に転職したらお祝い金を提供すると持ちかけて転職を勧奨し、繰り返し手数料収入を得ようとするケースが横行しました。
このような行為は、労働市場における需給調整機能を歪め、労働者の雇用の安定を阻害する行為なので、お祝い金は規制されることになりました。
職業紹介事業者については令和3年から規制の対象になっており、今回、募集情報等提供事業者にも同等の規制がされるようになります。
規制の目的
求職者に対する金銭やギフト券の提供は、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
ア 短期間での離職を助長する、求職者が本来の適性や希望よりも金銭を優先するなど、適正ではない行動選択を促すこと
イ 職業紹介事業者等の質の向上に沿わないこと
ウ 求人企業にとって合理的ではない負担が増加すること
3.金銭提供禁止の内容
(1) 金銭提供禁止の原則
指針では、「求職の申込みの勧奨については、求職者が希望する地域においてその能力に適合する職業に就くことができるよう、職業紹介事業の質を向上させ、これを訴求することによって行うべきものであり、職業紹介事業者が求職者に金銭等を提供することによって行うことは好ましくなく、お祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供することによって行ってはならないこと。」とされています(募集情報等提供事業者についても同一の条項が規定されます)。
具体例
ア 求職者が登録または就職した際に現金やギフトカードを支給する行為
イ 就職後一定期間勤務した場合に追加の金銭的インセンティブを支給する行為
ウ 求職者の紹介を促すために、紹介者へ金銭等を提供する行為
(2)規制の例外
上記の規定のとおり、「社会通念上相当と認められる程度」を超えていなければ、禁止されません。
「社会通念上相当と認められる程度」がどの程度であるのかは明らかではありませんが、提供される金銭等の趣旨だけでなく、額や経済価値、提供手法、その有する離転職誘引効果、複数事業者からの料金請求等に伴うトラブルが生じやすいまたは生じてきた形態かどうかなど、労働市場への影響をみて、総合的に判断されることになります。
具体的には、以下のような事項については、規制の対象外とされます。
① 提供するサービスの質の向上を図るため、サービス利用者からアンケート等への回答を求める場合であって、回答者すべてに対してではなく、抽選による少数者に対して、500円程度の電子ギフト券等を提供するもの。
② イベント来場者を確保するため、転職フェアへの来場及びブース訪問者に対して、500円程度の電子ギフト券等を提供するもの(求人サイトへの登録の対価として提供されるものを除く)。
4.まとめ
令和7年4月1日からの改正により、職業紹介事業者に加え、募集情報等提供事業者も求職者への金銭提供が原則禁止されることとなります。
募集情報等提供事業者は、それまでにお祝い金について廃止などを行う必要があります。
日本では、江戸時代から「慶庵」「口入れ屋」といった有料職業紹介がありましたが、1919年のILO条約、1938年の職業紹介法の改正で営利目的の職業紹介は制限されました。その後、1999年の職業安定法の改正によって有料職業紹介は解禁されましたが、このように新しい業界なのでしばしばルールが変更されています。
以上