反社会的勢力との取引を回避する予防策と、そのおそれがある者との取引の対応方法
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1 はじめに
新しい取引が決まったと思ったのも束の間、不幸にも取引先に反社会的勢力と思われる者がいることが判明することがあります。
反社会的勢力も様々な方法で資金集めを行っており、一般企業に扮して取引を行うことも珍しくありません。
それに気づかずに取引を開始してしまったという場面はどのような企業にもあり得ることといえます。
このような場合に取引を進めてしまえば自社の利益やレピュテーションを損なうことがあり得ます。
本記事では、反社会的勢力との取引を行うリスク、反社会的勢力と判明した場合の対応策や、そのような取引を回避するための予防策について解説します。2 反社会的勢力と取引するリスク
取引先に反社会的勢力がいる場合、以下のようなリスクがあり得ます。
①不当な取引を余儀なくされる
まず、取引先との取引において威力を用いられる、暴力等を背景にした不当な要求を求められる、などといった直接的な被害があり得ます。
このような被害を受ければ、円滑な取引など不可能ですし、会社の従業員等の心身に著しい負担が生じます。②レピュテーションの低下
また、反社会的勢力と取引を行った企業として、社会的な非難を受け、会社のレピュテーションは著しく低下します。
③他の取引の解消
さらに、暴力団排除条例等により、多くの契約書では反社会的勢力の排除条項が盛り込まれ、反社会的勢力と取引がある企業との契約についても解除できるものも多いといえます。
これにより、反社会的勢力との取引を行ったことによって、他の取引先から契約を解除されるおそれなどがあり得ます。
特に、金融機関等の対応は厳格になる場合もあり、借入金の一括返済をしなければならないことや、以後、融資を受けられなくなる場合もあるでしょう。3 予防方法
反社会的勢力との取引を回避するためには、以下のような方法があり得ます。
①反社会的勢力排除条項の追加
取引の契約書に反社会的勢力の排除条項を追加し、反社会的勢力ではないことの表明保証を相互に行い、また反社会的勢力であることが判明した場合には直ちに契約を解除できる条件などを盛り込むことが考えられます。
これにより、反社会的勢力との取引を終了させることができます。②反社会的勢力に該当しないかのチェック
反社会的勢力であるかどうかについてチェックを行うことも重要です。
方法に決まりはありませんが、ウェブで取引先や重要人物の氏名を検索し、不審な事由がないか確認する方法や、企業情報を収集・提供している企業から情報の提供を受ける方法などが考えられます。
取引前に行うこととし、また取引中に疑わしい事由がある場合には、取引中にも継続的に実施することが有用です。
また、疑わしい場合には、警察に情報提供や相談をすると協力してくれることがあります。
警察署、暴力団対策課又は公益財団法人暴力団追放運動推進都民センターに対して、暴力団か否かを照会することもできます。③規程類の整備・社内教育
社内ルールとして、反社会的勢力との取引を回避するための予防策や、対応方法についてマニュアル化して、それらに関する研修等を実施して従業員を教育することが有用です。
4 反社会的勢力と判明した場合の対応方法
①情報の収集
反社会的勢力の疑いが生じた場合には、そのための情報収集を行います。
反社会的勢力と認定できる資料や情報を記録化します。②やり取りの記録
取引先とのやり取りを記録化(メール内容や架電の受信状況等)します。
③窓口の整理
反社会的勢力への対応を個人に委ねるのではなく、企業としての窓口を用意し、集約します。
④不当な要求に応じず毅然と対応する
圧力に負けて要求に応じると、さらに不当な要求がされる場合があります。
根拠がある要求であるのかを検討し、毅然と対応することが求められます。⑤契約解除の検討
反社会的勢力の排除条項等を活用して契約解除ができないかを検討します。
また、仮に、そのような条項がなかったとしても、相手方の対応が不当であることを根拠として契約の解消が可能である場合もあるので、それも検討します。⑥専門家への相談
法律事務所に窓口になってもらうなどを検討するとよいでしょう。