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オープンソースソフトウェア(OSS)利用における法的リスクとその回避策を教えてください。

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目次

  1. 1. はじめに
  2. 2. OSSの概要
    1. 2.1 OSSとは
    2. 2.2 OSSライセンスの種類
  3. 3. OSS利用における法的リスク
    1. 3.1 OSS提供者に対する責任追及の困難性
    2. 3.2 OSSライセンス違反による法的リスク
    3. 3.3 OSSの品質リスク
  4. 4. OSSの法的リスク回避策
    1. 4.1 OSSライセンスの適切な管理
    2. 4.2 OSSの品質管理
    3. 4.3 契約書での責任分担の明確化
  5. 5. まとめ

OSSを利用する際の法的リスクとしては、①ライセンス違反(著作権侵害の可能性)、②品質リスク(無保証によるトラブル)、③責任追及の困難性が挙げられます。これを回避するためには、ライセンス条件の確認、セキュリティ対策、契約書での責任範囲の明確化が重要です。

1. はじめに

オープンソースソフトウェア(OSS)は、現代のソフトウェア開発において不可欠な技術資源となっています。企業がOSSを利用することで、開発コストの削減や迅速なシステム構築が可能となる一方で、適切なライセンス管理を行わない場合、法的リスクが生じる可能性があります。本稿では、OSSの基本的な概要とライセンスの種類を整理した後、OSS利用に伴う主要な法的リスクを詳しく分析し、それを回避するための具体的な対策について解説します。 

2. OSSの概要

2.1 OSSとは

OSSとは、ソースコードが公開されており、誰もが自由に使用、改変、再配布できるソフトウェアを指します。OSSは通常、コミュニティによって開発・維持されており、商用ソフトウェアと比較してコスト削減や技術革新の柔軟性に優れているという特長を持っています。 

2.2 OSSライセンスの種類

OSSは特定のライセンス条件のもとで提供されており、ライセンスの条件を遵守しない場合、契約違反として法的な問題が発生する可能性があります。典型的な条件は、              著作権表示の保持(OSSの著作権表示やライセンス文書を削除せずに維持する必要があること)や、責任の免除(OSSの提供者は、ソフトウェアの動作保証や責任を負わないこと)です。OSSライセンスは主にコピーレフト型と許容型に大別されます。 

コピーレフト型ライセンス

ソフトウェアの改変や再配布の際には、改変後のソースコードも公開する義務があります。代表例として、GNU General Public License(GPL)などがあります。 

許容型ライセンス

ソースコードの公開義務がなく、商用利用が容易である。代表例として、MITライセンスやApacheライセンスがあります。このように、OSSライセンスの条件を理解し、適切に遵守することが非常に重要です。 

3. OSS利用における法的リスク

OSSを利用する際には、以下のような法的リスクに気を付ける必要があります。 

3.1 OSS提供者に対する責任追及の困難性

多くのOSSは「無保証(as-is)」とされており、提供者が動作保証を行わない。例えば、OSSにバグやセキュリティの脆弱性があった場合でも、開発者に対して損害賠償を求めることは基本的に出来ません。多くのOSSライセンスでは「提供者は一切の責任を負わない」と明示されており、利用者自身がリスクを負うことになります。 

3.2 OSSライセンス違反による法的リスク

OSSのライセンス条件を遵守しない場合、契約違反及び著作権侵害と見なされる可能性があります。

例えば、以下のようなケースでは、ライセンス契約に抵触するとともに、ライセンス違反の利用は許諾されていないため著作権を侵害していると評価されます。

  • コピーレフト型ライセンス(GPLなど)に基づくOSSを利用する際に、改変後のソースコードを公開しなかった場合、翻案権(法27条)侵害になります。
  • OSSのソースコードやバイナリをライセンス条件を守らずにコピーしたり、ライセンスで許可されていない方法でOSSをコピーして社内システムで利用したりすれば、複製権(法21条)侵害となる。
  • ライセンス条件を守らずにOSSをインターネット上で配布すれば、公衆送信権(法23条)侵害となる。

違反が発覚した場合、ソフトウェアの使用停止や損害賠償の請求を受けることがあります。 

3.3 OSSの品質リスク

OSSは無料で利用できますが、品質が保証されていないため、セキュリティの脆弱性や動作不良のリスクが存在します。企業がOSSを組み込んだ製品をユーザに提供した場合、ユーザが不具合によって損害を被ったときに、企業が責任を問われる可能性があります。上述のようにOSSの提供者は無保証なので、当該企業は損害を転嫁する先がありません。

4. OSSの法的リスク回避策

OSSの法的リスクを回避するためには、以下の対策が有効です。 

4.1 OSSライセンスの適切な管理

OSSを利用する際には、ライセンス条件を事前に確認し、適用範囲を把握すること。コピーレフト型ライセンスを使用する場合、ソースコードの公開義務が生じることを理解する必要があります。 

4.2 OSSの品質管理

セキュリティスキャンやコードレビューを実施し、品質をチェックするべきです。また、定期的にOSSのアップデートを確認し、脆弱性が報告されているバージョンの使用を避けることが求められます。

4.3 契約書での責任分担の明確化

OSSを組み込んだ製品を提供する際には、契約書に「OSSを使用していること」や「責任の範囲」について明記することが重要です。ユーザに対して、OSSの品質リスクを事前に説明し、適切な同意を得ておけば、製品にOSSに由来する何らかの不具合があっても免責される可能性があります。

5. まとめ

OSSは企業のIT戦略において非常に有用であり、適切に活用することで開発の効率化やコスト削減が可能となります。しかし、ライセンス違反や品質リスクを伴うため、事前のリスク管理が不可欠です。特に、OSSライセンスの適切な管理、品質リスクの回避策、契約書での責任分担の明確化が重要なポイントとなる。企業はこれらの対策を講じることで、OSSを安全かつ効果的に活用することができます。

以上

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クレア法律事務所

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