公表されている情報を解析して、解析結果を公開するサービスを検討しています。著作権法に抵触せずに適法に実施することができるでしょうか。また留意点を教えてください。
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1 はじめに
公表されている情報に創作性がありそれが著作物に該当する場合、それを複製することや、公衆送信することは、著作権者の許諾がなければできないことが原則です。
このため、解析結果の一部に、著作物の一部が含まれる場合には、それを公開することは、著作権者の複製権や、公衆送信権を侵害することになります。例外的に、著作権法では、他人の著作物を利用することができる場合を、権利制限規定として設けています(著作権法30条から47条の8)。
例えば、代表的な権利制限規定として、「引用による利用」があります(32条1項)。
「引用による利用」では、引用のルールに従っていれば、著作権者の許諾がなくとも、他人の著作物の利用(複製や公衆送信)をすることができます。
しかし、「引用」として許される場合には、「自己の著作物が『主』であり、引用部分が『従』という関係でなければなりません。
情報解析の結果を公表する場合には、解析結果のみを表示することが想定されるので、このような主従関係がないことになります。
このため、「引用」によって利用することはできないと考えられています。2 新設された著作権法47条の5(情報解析サービス目的の著作物の利用)
著作権法47条の5は、情報の解析の重要性と、一定程度の軽微な利用行為であれば、著作者に不利益が生じる程度が小さいことを踏まえ、情報解析に関する他人の著作物の利用行為が許されるという規定です。
同条に基づくと、情報解析サービス(情報解析を行い、その結果を提供するサービス)のために、他人の著作物を利用することができます。
同条では、「利用」の方法には特に限定がありません。
そのため、複製、翻案、公衆送信等の限定がなく許されます。また、公表されたものであれば、著作物についても限定がありません。
そのため、ウェブ上でアクセス可能な著作物や、出版された出版物等も含まれます。具体的なサービスの想定として、文化庁のウェブサイトでは、以下のようなサービスが挙げられています。
・特定のキーワードを含む書籍を検索し,その書誌情報や所在に関する情報と併せて,書籍中の当該キーワードを含む文章の一部分を提供する行為(書籍検索サービス)
・大量の論文や書籍等をデジタル化して検索可能とした上で,検証したい論文について,他の論文等からの剽窃の有無や剽窃率といった情報の提供と併せて,剽窃箇所に対応するオリジナルの論文等の本文の一部分を表示する行為(論文剽窃検証サービス)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/なお、法47条の5は、平成31年1月1日施行の改正著作権法で新設されたものです。
従来は、上記のような情報解析結果を表示することが許されるか否かが明らかではなく、このようなサービスが躊躇されることもありました。3 著作権法47条の5の要件
同条に基づくと、情報解析サービス(情報解析を行い、その結果を提供するサービス)のために、他人の著作物を利用することができるのは、以下の要件を満たす場合とされます。
①利用する著作物が公表されたものであること
②情報解析サービスの目的上必要と認められる限度であること
③情報解析サービスに付随する範囲であること
④軽微利用であること
⑤政令で定める基準に従うこと
⑥著作権者の利益を不当に害することがないこと要件①は、利用する他人の著作物が公表されたものであることを要求しています。
ウェブ上で、誰でもアクセス可能な情報については問題なく該当します。要件②は、他人の著作物の利用行為が情報解析サービスに必要であることを要求しています。
解析結果にあてはまる他人の著作物を列挙するサービスなどでは、他人の著作物の列挙が必要であることが通常であるため、該当します。要件③は、他人の著作物の利用行為が情報解析サービスに付随するものであることを要求しています。
情報解析の結果を提供することに対し、他人の著作物を利用することが従たる関係にあることが求められます。
そのため、他人の著作物の利用自体が目的になっているような場合には、情報解析サービスに付随するものではないので、許されません。要件④は、他人の著作物の利用が軽微なものであることを要求しています。
この判断は、他人の「著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし」てされることとされています。要件⑤は、「政令で定める基準に従うこと」を要求しています。
施行令・施行規則では、以下の要件を満たすことを要求しています(施行令第7条の4第1項第2号、同条第1項第3号、施行規則第4条の5第1号、同条第2号)。aサービスに使用するデータベースに係る情報漏えいの防止のための措置を講ずること
bサービスが著作権法47条の5の要件に適合するものとなるよう、あらかじめ、当該要件の解釈を記載した書類の閲覧、学識経験者に対する相談その他の必要な取組を行うこと
c サービスに関する問合せを受けるための連絡先その他の情報を明示することこのうち、bの「当該要件の解釈を記載した書類」としてはウェブサイトへの掲示等が考えられます。
また、c「学識経験者に対する相談」としては、情報解析サービスが著作権法47条の5の要件に該当するか否かについてレポートを求めることなどが考えられます。要件⑥は、他の要件を満たす場合であっても、「著作権者の利益を不当に害する」ものは許されないことを規定しています。
4 参照条文
改正著作権法 第47条の5
(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)
電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出することによつて著作物の利用の促進に資する次の各号に掲げる行為を行う者(当該行為の一部を行う者を含み、当該行為を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆への提供又は提示(送信可能化を含む。以下この条において同じ。)が行われた著作物(以下この条及び次条第二項第二号において「公衆提供提示著作物」という。)(公表された著作物又は送信可能化された著作物に限る。)について、当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、いずれの方法によるかを問わず、利用(当該公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る。以下この条において「軽微利用」という。)を行うことができる。ただし、当該公衆提供提示著作物に係る公衆への提供又は提示が著作権を侵害するものであること(国外で行われた公衆への提供又は提示にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知りながら当該軽微利用を行う場合その他当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 電子計算機を用いて、検索により求める情報(以下この号において「検索情報」という。)が記録された著作物の題号又は著作者名、送信可能化された検索情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。)その他の検索情報の特定又は所在に関する情報を検索し、及びその結果を提供すること。
二 電子計算機による情報解析を行い、及びその結果を提供すること。
三 前二号に掲げるもののほか、電子計算機による情報処理により、新たな知見又は情報を創出し、及びその結果を提供する行為であつて、国民生活の利便性の向上に寄与するものとして政令で定めるもの
2 前項各号に掲げる行為の準備を行う者(当該行為の準備のための情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆提供提示著作物について、同項の規定による軽微利用の準備のために必要と認められる限度において、複製若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この項及び次条第二項第二号において同じ。)を行い、又はその複製物による頒布を行うことができる。ただし、当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該複製又は頒布の部数及び当該複製、公衆送信又は頒布の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
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