当社はテレワークの実施を検討しています。法的な留意点を教えてください。
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テレワークとは
働き方改革が叫ばれる中で、「テレワーク」という働き方に注目が集まっています。
テレワークとは、労働者が情報通信技術を利用して、オフィス以外の場所で勤務する勤務形態をいいます。
その勤務形態には、以下のようなものに分類されます。・在宅勤務
・サテライトオフィス勤務
・モバイル勤務このようなテレワークは、労働者にとって、柔軟な働き方が実現でき、労働者の精神的・身体的負担の軽減に役立ちます。企業側にとっても、業務の効率化や、人材の獲得、オフィスの管理コストの低減等のメリットがあります。
近年、テレワークに有益な様々なSaaSサービスを活用できることもあり、このような形態を選択することが増えてきています。本稿では、テレワークを導入する場合の、労働法上の留意点をご紹介します。
(参考:「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」厚生労働省、以下「ガイドライン」といいます。)労働時間の管理
テレワークでは、労働者の働いている時間を現実に確認することができません。この場合であっても、企業は、労働者の労働時間を把握する義務があります(労働安全衛生法第66条の8の3)。
労働時間の把握の方法は、原則として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録に基づいて行うべきこととされます(労働安全衛生規則第52条の7の3)。
このような記録によって把握することができない場合には、労働者による自己申告によることになります。自己申告による場合には、企業は、自己申告が適正にされるように十分な説明を行ったり、必要に応じて適正な申告がされているのかに関する調査を行ったりするべきです。特に、過少申告の可能性を把握できる状況で放置すると企業側の責任を問われる可能性があります)。休憩時間
テレワークであっても、休憩時間は、通常の勤務形態と同様に管理する必要があります。
休憩時間は、一部の業種を除き、労働者に一斉に付与することとなります(労働基準法第 34 条第2項)。
テレワークでこのような運用を執ることが不合理であれば、テレワークを行う労働者について、労使協定を結ぶことにより、この原則を適用除外とすることができます。また、テレワークに際しては、柔軟な働き方の一環として採用されることもありますので、一定の時間、労働者が労働から離れることを認めることがあります。
労働者がこの時間を自由に利用することができる場合には、休憩時間として扱うことがあり得ます(反対に、労働者の待機時間に過ぎないなど自由ではない場合には、休憩時間として取り扱うことはできません)。
休憩時間を取得した場合には、始業時刻や終業時刻を調整することや、その休憩時間を時間単位の年次有給休暇として取り扱うことがあり得ます。
始業時刻や終業時刻を調整する際には、就業規則にその旨を記載することが必要です。また、時間単位の年次有給休暇として扱う場合には、労使協定の締結が必要です。長時間労働
テレワークを採用すると、企業は、労働者が業務を行っている様子を現認できないので、労働時間の管理が難しくなり、労働者が長時間労働を行ってしまう事態もあり得るところです。
企業としては、このような事態があり得ることを踏まえて、長時間労働を防止する措置を執るべきといえます。
ガイドラインでは、具体的に、以下のような方法が挙げられています。① 時間外等に業務に関するメール送付を抑制すること
② 時間外等に業務上のシステムへのアクセスを制限すること
③ テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働を禁止すること
④ 長時間労働等を行う労働者に注意喚起すること時間外労働・休日労働
テレワークが実施される場合であっても、通常の勤務形態の場合と同様に、時間外労働や、休日労働の場合には、三六協定の締結・届出が必要となります。
また、時間外労働・深夜労働・休日労働に係る割増賃金の支払が必要となります。テレワークが実施されると、企業としても、労働者としても、労働時間の管理が甘くなってしまうことがあり得ます。
企業としては、時間外労働・休日労働を厳格に管理しておかなければ、労働者が時間外労働や休日労働を行うことによって、時間外労働・休日労働に関する賃金を支払わなければならないこともあり得ます。
企業としては、テレワークであっても、各労働者の業務の分量・期限を適切にコントロールし、時間外に業務を行っている疑いがあるときには適切に指導をするなどすることが求められます。フレックスタイム制
テレワークは、特に在宅勤務の場合などでは、フレックスタイム制と親和性が高いといえます。
フレックスタイム制とは、労働者が始業及び終業の時刻を決定することができる制度です。その採用のためには、就業規則でフレックスタイム制の内容を定め、清算期間・総労働時間等を労使協定で締結することが必要です。事業場外みなし労働時間制
テレワークによって、使用者の具体的指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、事業場外労働のみなし労働時間制を適用することも可能です(労働基準法第 38 条の2)。
事業場外みなし労働時間制を適用する場合、テレワークを行う労働者は、就業規則等で定められた所定労働時間を労働したものとみなされます。つまり、実際の労働時間が所定労働時間より短い場合や長い場合であっても、みなし労働時間の労働をしたものとして労働時間を算定することができる制度です。
もっとも、ある業務が所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、当該業務の遂行に通常必要とされる時間の労働をしたものとみなされます(労働基準法38条の2第1項ただし書き)。通常必要とされる時間については、明確化するために、労使協定を結ぶことが望ましく、これを結んだ場合には、労働基準監督署に届出をする必要があります。以上のような事業場外みなし労働時間制によれば、テレワークの労働者の労働時間を管理することが容易になります。
このような事業場外みなし労働時間制の適用のためには、以下の要件が必要です。① 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこ ととされていないこと
② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと最後に
以上のような制度を活用して、従業員の生活と業務の調和を図ることができれば、従業員だけではなく、企業の成長にもつながると思われます。
本稿がその参考になれば何よりです。
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