【2024年4月施行】裁量労働制の導入方法の変更
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1 はじめに
2024年4月1日施行の労働基準法施行規則の改正により、裁量労働制の導入方法が変更されます。
既に裁量労働制を採用している企業にも、これから裁量労働制を採用する企業にも影響がありますので、留意が必要です。2 裁量労働制とは
労働基準法では、労働者の実労働時間(実際に働いた時間)を適切に管理・算定し、それに従った賃金を支払うことが必要です。
しかし、労働者の業務の性質によっては、遂行方法や時間を労働者に委ねる必要があります。
このような業務を行う労働者には、裁量労働制を採用することが検討できます。
裁量労働制は、労働者の実労働時間ではなく、労使協定や労使委員会の決議で定められた時間によって労働時間を算定する制度です(いわゆる、みなし労働制)。
つまり、労働者が実際にどのくらい労働したかではなく、決められた時間の労働をしたとみなして、その時間分の賃金を支払うという制度です。
このような裁量労働制を採用するために必要な条件がありますので、適切に採用を進める必要があります。裁量労働制には専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があります。
3 専門型裁量労働制
(1)専門型裁量労働制を採用できる業種
裁量労働制を採用できる業種は限定されています。
以下の業種に限られます。① 新商品もしくは新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
② 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であって、プログラムの設計の基本となるものをいう。[7]において同じ)の分析または設計の業務
③ 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務または放送法(昭和25年法律第132号)第2条第28号に規定する放送番組(以下「放送番組」という) の制作のための取材もしくは編集の業務
④ 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
⑤ 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
⑥ 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
⑦ 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握またはそれを活用するための方法に関する考案もしくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
⑧ 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現または助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
⑨ ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
⑩ 有価証券市場における相場等の動向または有価証券の価値等の分析、評価またはこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
⑪ 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
⑫ 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)
⑬ 銀行または証券会社における顧客の合併および買収に関する調査または分析およびこれに基づく合併および買収に関する考案および助言の業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)
⑭ 公認会計士の業務
⑮ 弁護士の業務
⑯ 建築士(一級建築士、二級建築士および木造建築士)の業務
⑰ 不動産鑑定士の業務
⑱ 弁理士の業務
⑲ 税理士の業務
⑳ 中小企業診断士の業務(2)専門型裁量労働制の採用手続き
制度の導入に当たっては、次の事項を労使協定により定めた上で、所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
① 制度の対象とする業務
② 労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
③ 対象業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者が対象労働者に具体的な指示をしないこと
④ 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置
⑤ 対象労働者からの苦情の処理のため実施する措置
⑥ 制度の適用に当たって労働者本人の同意を得ること
⑦ 制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
⑧ 制度の適用に関する同意の撤回の手続
⑨ 労使協定の有効期間
⑩ 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中及びその期間満了後5年間(当面の間は3年間)保存すること(3)改正
改正前の法令では、上記の⑥⑦⑧を労使協定で定めることが必要ではありませんでしたが、改正法によって⑥⑦⑧が新たに追加され、労使協定に定めることが必要になりました。
また、⑩について労働者の「同意及び同意の撤回」について記録義務を労使協定に定めることが必要になりました。
既に専門型裁量労働制を採用している事業者は、労使協定に追加し、労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行う必要があります。4 企画業務型裁量労働制
(1)企画業務型裁量労働制とは
企画業務型裁量労働制は、「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務の性質上、これを適切に遂行するには、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務遂行の手段や時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務等」をいいます。
専門型裁量労働制とは異なり、具体的な業種は定められていないため、上記に適するものであれば採用できます。
しかし、企画業務型裁量労働制の導入手続きは専門業務型裁量労働制よりも厳格です。(2)企画業務型裁量労働制の採用手続き
企画業務型裁量労働制の採用手続きは以下のとおりです。
①労使委員会を設置する
②労使委員会で決議する
③個別の労働契約や就業規則等の整備
④所轄労働基準監督署に決議届を届け出る
⑤労働者本人の同意を得る
⑥労働基準監督署への定期報告(3)労使委員会
上記①のとおり、企画業務型裁量労働制を導入するためには労使委員会を組織し、決議しなければなりません。
労使委員会とは、以下の要件を満たす必要があります。a委員の半数について、各事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、ない場合においては労働者の過半数を代表する者に任期を定めて指名されていること
b委員会の議事について、議事録が作成・保存されるとともに、労働者に対する周知が図られていること
c運営規程に必要事項が定められていること(4)運営規程
労使委員会の運営規程は以下を規定することが必要です。
① 労使委員会の招集に関する事項
② 労使委員会の定足数に関する事項
(※)労使を代表する委員それぞれ1名計2名で構成される委員会は労使委員会として認められません。
③ 労使委員会の議事に関する事項
④ 対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容について使用者からの説明に関する事項
⑤ 制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
⑥ 開催頻度を6箇月以内ごとに1回とすること
⑦ その他労使委員会の運営について必要な事項上記のうち、④⑤⑥が改正法によって新たに定められました。
このため、既に企画業務型裁量労働制を採用している事業者も、運営規程を見直し改正する必要があります。(5)労使委員会の決議
労使委員会では、以下の事項について、委員の5分の4以上の決議をしなければなりません。
① 制度の対象とする業務
② 対象労働者の範囲
③ 1日の労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
④ 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉確保措置の具体的内容
⑤ 対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
⑥ 制度の適用に当たって労働者本人の同意を得なければならないこと
⑦ 制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと
⑧ 制度の適用に関する同意の撤回の手続
⑨ 対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
⑩ 労使委員会の決議の有効期間(※3年以内とすることが望ましい)
⑪ 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を決議の有効期間中及びその期間満了後3年間保存すること上記の決議事項の⑧⑨について改正法によって新たに追加されました。
また、⑪について同意及び同意の撤回について記録及び保存について追加されました。
このため、これまで採用している事業者も運営規程を見直し、運営方法も見直すことが必要です。
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