目次
1.はじめに
年次有給休暇とは、賃金が支払われる休暇のことです。
事業者は、業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、 一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません。
このため、事業者は、年次有給休暇の付与に関するルールについて把握しておくことが必要です。
2.年次有給休暇が付与される要件
年次有給休暇は、以下の要件満たした労働者に付与する必要があります。
- 雇入れの日から 6か月継続勤務
- 全労働日の8割以上出勤
3.付与日数
年次有給休暇の付与日数は、通常の労働者に対する付与日数と、週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数とで区別されています。
通常の労働者に対する付与日数は以下のとおりです。
継続勤務年数(年) |
0.5 |
1.5 |
2.5 |
3.5 |
4.5 |
5.5 |
6.5以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数(日) |
10 |
11 |
12 |
14 |
16 |
18 |
20 |
週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数は、以下のとおりです。
週所定 労働時間 |
1年間の 所定労働日数 |
継続勤務年数(年) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 | |||
付与日数 | 4日 | 169~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 | |
2日 | 73日~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 | |
1日 | 48~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
4.年次有給休暇の取得時季
労働者が年次有給休暇の取得を届け出る場合、使用者は労働者から指定された日に年次有給休暇を付与しなければなりません。
ただし、労働者の指定した日に年次有給休暇を与えると、事業の正常な運営が妨げられる場合は、使用者に休暇日を変更することができます。
「事業の正常な運営が妨げられる場合」というのは、一般的な業務多忙などでは認められず、できる限り年次有給休暇の取得のために配慮したうえでそれでもなお代替要員の確保が難しい等の事情が必要といえます。
5.年次有給休暇の時季指定義務
年次有給休暇は、労働者の希望があってはじめて与えることが原則です。
しかし、労働者による年次有給休暇の取得がされていないという事情を踏まえ、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、年次有給休暇の日数のうち 年5日について、使用者が労働者の意見を尊重して時季を指定して取得させなければなりません。
具体的には、年2日しか取得していない従業員がいれば、残り3日について確実に年次有給休暇を取得するように意見を聴いて取得させなければならないということになります。
なお、年次有給休暇を5日以上取得済みの労働者に対しては、使用者による時季指定は不要です。
これにより、労働者には少なくとも年5日以上の年次有給休暇を確実に取得させなければならないといえます。
6.計画年休
年次有給休暇の付与日数のうち、5日を超える部分については、労使協定を結ぶことにより、計画的に休暇取得日を割り振ることができます。
これにより、事業の繁忙期等を踏まえて、計画的に年次有給休暇を取得させることができます。
また、計画年休により取得された年次有給休暇については、上記の時季指定義務の5日に含まれることになります。
7.就業規則への規定
休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項です。
このため、使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。
8.年次有給休暇管理簿
使用者は、時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、当該年次有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければなりません。