フリーランス保護新法について教えてください。

1 はじめに

近年、フリーランスという働き方が普及している一方、フリーランスと取引先の間のトラブルが増えています。
これは、フリーランスは個人として業務を受注する一方、その発注者は会社等の組織であり、フリーランスの交渉力が弱いという背景があります。
これにより、取引条件が不明確なまま発注がされ、発注者の都合で条件が決まってしまうことや、報酬の支払いが遅延すること、不当に業務のやり直しをさせられることなどがトラブルとしてあります。
このような事態を防止するために下請法がありましたが、下請法の適用対象になるには、発注者側が資本金1000万円超の企業であることが必要であるため、フリーランスの保護として不十分でした。

そこで、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス保護新法)が2023428日に可決成立し、同年512日に公布されました。
2023年512日から16ヶ月を超えない範囲で施行されます。

2 フリーランス保護新法の対象

(1)対象になる取引

フリーランス保護新法の対象になる取引は、受注者であるフリーランスと、その発注事業者との間の業務委託です。
業務委託とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することをいいます。

(2)対象になる発注事業者

対象になる発注事業者は、フリーランスに業務委託をする事業者であって、従業員を使用するものをいいます(法律では「特定受託事業者」と呼びますが、本記事では分かりやすさのために「発注事業者」と呼びます)。
ただし、「週所定労働20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる者」が従業員であり、これを満たさない短時間・短期間等の一時的に雇用される者は「従業員」には含まれません。
つまり、上記のような従業員を雇用している団体、組織、会社等がフリーランスに業務委託をする場合には、フリーランス保護新法が適用されます。

(3)フリーランス

対象になるフリーランスは、発注事業者から業務委託を受ける者であって、従業員を使用しない者です(法律では「特定受託事業者」と呼びますが、本記事では分かりやすさのために「フリーランス」と呼びます)。
ただし、「週所定労働20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる者」が従業員であり、これを満たさない短時間・短期間等の一時的に雇用される者は「従業員」には含まれません。
つまり、上記のような従業員を雇用していない者(個人に限らず、会社等も含みます。)が発注事業者から業務を受託する場合には、フリーランス保護新法が適用されます。

3 規制の内容①(取引の適正化)

(1)取引条件の明示

発注事業者は、フリーランスに対し業務委託をした場合は、直ちに、フリーランスの給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により明示しなければなりません。

(2)期日における報酬支払

発注事業者は、検査をするかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、報酬の支払期日を定めてそれまでに支払わなければなりません。
また、支払期日を定めなかった場合などには、次のように支払期日が法定されますので、それまでに支払いすることが必要になります。

①当事者間で支払期日を定めなかったとき
→物品等を実際に受領した日

②物品等を受領した日から起算して60日を超えて定めたとき
→受領した日から起算して60日を経過した日の前日

(3)禁止事項

フリーランスとの業務委託に関し、①~⑤の行為をしてはならないものとされます。
また、⑥・⑦の行為によってフリーランスの利益を不当に害してはならないとされます。

①フリーランスの責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
②フリーランスの責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
③フリーランスの責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
④通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
⑤正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
⑥自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
⑦フリーランスの責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること

上記の業務委託は一定の期間継続する者を対象とします。
この期間は、今後、政令で明らかにされます。

4 規制の内容②(就業環境の整備)

(1)募集情報の的確表示

広告等により募集情報を提供するときは、虚偽の表示等をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
具体的には、以下のような行為が禁止されます。

  • 意図的に実際の報酬額よりも高い額を表示する。
  • 実際に募集を行う企業と別の企業の名前で募集を行う。
  • 報酬額の表示が、あくまで一例であるにもかかわらず、その旨を記載せず、当該報酬が確約されているかのように表示する。
  • 既に募集を終了しているにもかかわらず、削除せず表示し続ける。

(2)育児介護等と業務の両立に対する配慮

フリーランスが育児介護等と両立して業務委託(政令で定める期間以上のもの。)に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければなりません。
この配慮の具体的な内容は、今後、指針等で明らかになる予定です。

(3)ハラスメントの防止

フリーランスに対するハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じなければなりません。
また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったことを理由として不利益な取り扱いをしてはなりません。

(4)中途解除等の事前予告

業務委託(政令で定める期間以上のもの。)を中途解除する場合や、更新を拒絶する場合には、原則として、中途解除日等の30日前までにフリーランスに対し予告しなければなりません。
また、それらの理由をフリーランスが求めた場合には、理由を開示しなければなりません。

Category:労働問題 , 契約

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