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不可抗力条項・ハードシップ条項について教えてください。

契約書

第1 はじめに

国際情勢が不安定な状況にあります。
企業法務において、契約締結時には予期できなかった事態が発生した際のリスク分配は極めて重要です。
不安定な国際情勢、大規模な自然災害やCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的な拡大など、サプライチェーンを寸断する事象が頻発しています。
本記事では、予測不能な事態に直面した際の免責や契約改定の根拠となる「不可抗力条項」および「ハードシップ条項」の実務上の留意点について解説いたします。

 

第2 不可抗力条項

1 不可抗力の範囲と規定方法

1) 典型事由とキャッチオール規定

不可抗力条項では、対象範囲を明確にする必要があります。
台風等の自然災害や戦争等の非常事態を典型例として列挙するのが通常です。
特に売主の立場からは、自己のコントロールが及ばないリスクの影響を受けやすいため、典型事由に加え、「その他当事者の合理的なコントロールが及ばない事由」といった包括的な免責を認めるキャッチオール規定を設けることが望ましいとされます。 

2) 政府の規制・法令の変更

法令変更等による輸出入禁止は不可抗力として免責されやすい一方、契約締結時に既に存在した規制に基づく許認可が取得できなかった場合は、免責を認めるべきではありません。
契約書で特定の許認可取得を前提条件とするなど、あらかじめ責任の所在を明確にすることが重要です。 

3) 条項の適用対象

買主の主要義務は金銭支払であり、不可抗力の影響を受けるケースは比較的少ないため、条項を双方向にすると売主の免責範囲が不当に広がる懸念があります。
そのため、影響を受ける当事者を売主のみとする「片方向」の規定も考えられますが、買主が設備維持等の義務を負う場合は慎重な検討が必要です。 

2 除外項目と波及的影響

1) 免責から除外すべき事由

ストライキ等、当事者がその原因(労働条件の悪化など)に寄与した事象や、交通機関の障害など売主がコントロールすべき第三者の履行障害事由は、明示的に不可抗力から除外することが考えられます。

2) 間接的影響とサプライチェーン

東日本大震災時の計画停電による輸送障害など、波及的な影響が免責されるかは争いになりやすい点です。
CISG(国際物品売買契約に関する国連条約)のように支配可能性を要件とする場合、部品調達は売主の支配領域とされ免責されないのが一般的です。
したがって、売主としては仕入先に生じた事由も不可抗力に含む旨を明記することが重要です。
また、COVID-19による広範囲なロックダウン等についても、法的強制力のない「要請」をどう扱うかを含め、間接的影響の取扱いを明記しておくことが肝要です。 

3 代金支払義務の取扱い

日本の民法第419条第3項では、金銭債務の不履行については不可抗力をもって抗弁とすることができないとされています。
国際売買契約でも、金銭支払義務は免責対象から除外されるのが一般的です。
ただし、経済制裁等で送金自体が違法となるような極端なケースについては、例外的な不可抗力事由とする合意を検討する余地があります。 

4 免責の効果と当事者の義務

1) 免責の要件

一般的な免責内容は、事由解消までの「履行義務の中断」です。
ただし、相手方への通知や影響を最小化する合理的な努力義務が課されます。 

2) 長期化時の対応

不可抗力が長期化した場合、契約を解除できる規定を設けるべきです。
買主としては、代替品の調達権や費用の求償権のほか、売主が複数の買主を抱える場合に供給量を案分させる義務などを契約上確保しておくことが重要となります。 

2 ハードシップ条項

1 不可抗力条項との違い

不可抗力条項が履行義務の「免責」を主眼とするのに対し、ハードシップ条項は、契約締結後の原材料費高騰などの事情変更により条件維持が困難となった際、「契約内容の改定交渉」を申し入れる規定です。
価格維持が困難な場合に不可抗力で免責を主張できるかが問題となりますが、明示的な規定がない限り免責は困難とする考えもあり、不可抗力条項とは別の条項による対応が求められます。 

2 実務上の解決策

ハードシップ条項は交渉を義務付けるものの、合意に至る保証はありません。
確実な対応策としては、変動コスト要因を列挙し、その変動を価格に反映させる程度をあらかじめ具体的な数値や数式で定めておく「エスカレーション条項」の導入が実務上極めて有効です。

回答者

クレア法律事務所

クレア法律事務所のスタッフブログです。 主に事務所からのお知らせなどを発信しています。

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