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下請法が取適法に変更になったことに伴う変更点を教えてください。

コンプライアンス

第1 取適法(旧下請法)改正の概要と趣旨

1 法律の名称変更

従来の「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」は、本改正によって名称が変更されました 。
ア 正式名称と略称
新しい正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」となり、公式な略称は「中小受託取引適正化法」とされています 。

イ 実務上の通称
一般的には、通称として「取適法(とりてきほう)」と呼ばれます 。

2 施行日

ア 令和8年からの適用
本改正法は令和811日から施行されています 。
これより前に行われている取引は従前の法令のとおりです。

イ 対象となる取引
令和811日以降に行う製造委託等について、新たな取適法の規制が適用されることになります 。 

第2 取適法の主な変更点

改正法による主な変更点は多岐にわたりますが、実務上特に注意すべき5つのポイントについて、それぞれ実務への影響も交えて詳述いたします 。

1 特定運送委託の対象取引への追加

(1)新たな対象取引の拡大

従来の製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託に加え、新たに「特定運送委託」が適用の対象取引に追加されました 。

(2)特定運送委託の定義(取適法第2条第5項)

事業者が業として行う販売等の目的物たる物品等について、取引の相手方(相手方が指定する者を含みます。)に対する運送の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいいます 。

(3)想定される具体例

具体的には、家具小売業者が販売した家具を顧客へ引き渡す際の運送委託や、精密機器メーカーが請け負って製造した機器を顧客へ引き渡す際の運送委託などが該当します。
自社の拠点間輸送は原則対象外ですが、自社で販売する商品の配送を外部の運送業者に委託して顧客に届けるケースなどは、新たに取適法の規制対象に含まれることになります 。

 

2 従業員基準の追加

(1)適用対象事業者の基準変更

これまでは取引当事者の資本金基準によってのみ適用対象が決定されていましたが、本改正により「常時使用する従業員数」による基準が追加されました 。

ア 基準適用の優先順位
従業員基準は、資本金基準が適用されない場合に適用されます 。

イ 「常時使用する従業員」の定義
労働基準法に規定する労働者のうち、日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用される者を除く。)以外のものを指します。
正社員だけでなく、条件を満たすパートタイマーやアルバイト、契約社員なども含まれ得る点に注意が必要です。

(2)委託内容に応じた基準の相違

ア 製造委託・修理委託・特定運送委託等の場合
委託事業者が「常時使用する従業員300人超」であり、中小受託事業者が「300人以下」の場合に適用対象となります 。

イ 情報成果物作成委託(プログラムを除く)や役務提供委託等の場合
委託事業者が「常時使用する従業員100人超」であり、中小受託事業者が「100人以下」の場合に適用対象となります 。

(3)実務への影響

資本金が少ないため従来は下請法(取適法)の適用外とされていた企業であっても、従業員数によっては委託事業者として厳しい規制を受ける可能性があります。取引先の従業員数を把握するプロセスの構築が求められます。 

3 手形払等の禁止(取適法第5条第1項第2号)

(1)支払手段の厳格化

委託事業者の禁止事項として、手形払等の禁止が明記されました 。

(2)一括決済方式や電子記録債権の取り扱い

一括決済方式や電子記録債権の支払の期日が代金の支払期日より後に到来する場合において、支払期日に金銭を受領するために、中小受託事業者において割引を受ける等の行為を要するものは、金銭による支払と同等の経済的効果が生じるとはいえないため禁止されます 。

 

4 協議に応じない一方的な代金決定の禁止(取適法第5条第2項第4号)

労務費や原材料価格、エネルギーコスト等の高騰を背景に、適正な価格転嫁を促すための規定が新設されました 。

(1)禁止される行為の内容

中小受託事業者の給付に関する費用の変動等の事情が生じた場合において、中小受託事業者が代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、協議に応じない行為が禁止されます 。
また、協議において、中小受託事業者の求めた事項について必要な説明や情報の提供を行わず、一方的に代金の額を決定することも禁止されています 。

(2)「協議に応じない」等とされる具体的なケース

中小受託事業者からの協議の求めを明示的に拒む場合のほか、協議の求めを無視したり、回答を繰り返し先延ばしにしたりして、協議の実施を困難にさせる場合も違反に該当します 。
また、具体的な理由の説明や根拠資料の提供をすることなく、単に従前の代金の額を提示したり、引下げを提示したりすることも、一方的な代金決定とみなされるおそれがあります。

(3)実務への影響

中小受託事業者からの価格転嫁の要請に対し、形式的な対応や放置をすることは明確な違反行為となります。
社内で価格交渉のプロセスやエスカレーションのルールを整備し、協議の議事録などの記録を確実に残すことが重要です。

回答者

クレア法律事務所

クレア法律事務所のスタッフブログです。 主に事務所からのお知らせなどを発信しています。

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