ソフトウエアにまつわる経理上の問題点の整理
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ソフトウエアの位置づけ
ソフトウエアは,固定資産に位置づけられます。よって,その投資額は,会計上も税務上も,一時の費用にするのは妥当でなく,一定の耐用年数にわたって規則的に減価償却することになります。
そして,建物や土地や機械や備品といった目に見えるものではないため,これら有形固定資産に対して無形固定資産のカテゴリーに属します。なお,無形固定資産は,ほかに電話加入権や特許権や商標権などがあります。
取得価額の決定
ソフトウエアに限らず,投資にはいろいろなタイプのコストがかかります。これらのコストのうち,固定資産とするのか,それとも費用にしていいのかという点がポイントとなります。どちらを採用するかによって,会計上重要な違いをもたらすからです。
税務上も,一時の費用になると思って経理上は費用処理したのに,実はそれは税務では固定資産の取得価額にしなければならなかったとすると,申告調整しないかぎり税務トラブル発生ということになります。
つまり,どこまでが取得価額に含めるコストなのかを判断するのは非常に大切です。他人からソフトウエアを購入する場合や,他社に開発を委託する場合にはわりとわかりやすいですが,自前でソフトを開発したりするときには,どのように取得価額を算定するか(集計するか)が大きな問題となります。
加えて,ソフトウエアは自前で建物や機械を作るのとは異なり目に見えないものです。このため,どうしても判断が伴うことが多く,また,税務上も,税務当局とのトラブル(見解の相違)が生じやすいと考えられます。
また,ソフトウエアの場合,どうしても事前及び事後の研究開発が欠かせません。この研究開発に対するコストはそのときの費用としていいのか,取得価額に含めないといけないのかも大きな問題になります。
バージョンアップの問題
ソフトウエアの場合,バージョンアップは頻繁に行われます。このバージョンアップに関するコストは,会計所および税務上どう取り扱ったらいいのかがポイントです。
通常の固定資産の場合には,「修繕費と資本的支出」という形で議論されることが多くあります。すなわち,その固定資産の機能を維持するためのコストや保守管理のためのコストは,いかに巨額になっても,原則として費用処理(修繕費)が認められます。
一方,その固定資産の機能や便益といった資産価値を増大させるためのコストは,原則としてその固定資産に準じた取り扱い(資本的支出)になり,一時の費用として処理することが認められません。
しかし,ソフトウエアの場合,バージョンアップは維持管理なのか,それとも機能向上なのかという問題は,きわめて微妙な問題であり,経理処理上その判断が難しいと考えられます。また,税務上も,税務当局とのトラブル(見解の相違)が生じやすいと考えられます。
ソフトウエアの除却
固定資産は,取得価額を毎期規則的に減価償却することで各期にわたって費用化されていきますが,例えばその固定資産を廃棄した場合にまで,その作業を続ける必要はありません。まだ費用化されていない部分(未償却残高)は,その時点で一時に費用にしてかまいません。これが固定資産の除却です。
しかし,目に見える有形固定資産と違って,目に見えないソフトウエアの場合には,どの時点をもって,また,どういう形で,これを客観的に証明するかが困難であることが多い。
また,バージョンアップの場合,新たなバージョンに切り替わったことで,前のバージョンに要した未償却残高を除却できるのかどうか,できるとして,これをどう客観的に証明するのかという問題もあります。
とはいえ,やはり会計と税務の目的は違うわけで,会計ルールも一般に公正妥当な範囲であれば,それぞれ企業の特性や実情に応じて利益を算定すべきです。しかも,ITの急速な発達により,計算経済性の(少なくともハード面の)問題はかなり解決されています。とすれば,法人税の申告書できちんと調整ができていれば,税務ルールべったりの会計をする必然性はないということになります。
平成21年3月