ソフトウエアの取得価額として集計しなくてもよいコストは
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本来であれば,開発作業はすべてソフトウエアの取得価額を構成するとも考えられますが,研究開発に関係するものなどは,取得価額を構成せず,一時に費用として処理できるため,その区分をどうするのか,また,ほかにも取得価額に含めないことができるものがあるのか。
会計上の取り扱い
特に,研究開発費か取得価額かの区分について,会計上は以下のように区分します。
市場販売目的のソフトウエアについては「最初に製品化された製品マスターの完成時点」までのコストは取得価額に含めずに研究開発費として費用処理します。
自社製作のソフトウエアについては「将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる時点」までのコストは取得価額に含めずに研究開発費として費用処理します。
会計では,一定の時点で区切って,その前後でソフトウエアの取得価額を構成するか否かという判断になります。
税務上の取り扱い
税務上は,基本的に一定の時点で区別するということはせず,ここのコストの性質に応じて判断するというスタンスです。
本来なら取得価額となりますが,含めなくてもよいケースは以下のとおりです。
自己の製作に係るソフトウエアの製作計画の変更等により,いわゆる仕損じがあったため,不要となったことが明らかなソフト
研究開発に係るコスト。ただし,自社利用のソフトウエアについては,その利用により将来の収益獲得または費用削減にならないことが明らかなものに限る。
金額的に小さい間接費など。制作費等のために要した間接費,付随費用等でその費用の合計額が少額(その製作原価のおおむね3%以内の金額)であるもの
公正妥当な会計処理を前提として適正な原価計算によって取得価額に含めなくても差し支えないものと認められるコスト
このほかに,同じ研究開発でも,そのコストが,法人税法施行令第14条第1項第4号第5号に規定されている「試験研究費」や「開発費」に該当すれば,もともとソフトウエアの取得価額には含まれず,一括償却が可能(結果として一時の費用)となります。
ここで「試験研究費」とは,新たな製品の製造または新たな技術の発明に係る試験研究のために特別に支出する費用をいい,「開発費」とは,新たな技術者若しくは新たな経営組織の採用,資源の開発,市場の開拓または新たな事業の開始のために特別に支出する費用をいいます。?
実務上の留意点
会計の考え方に拘泥してしまい,一定の時期でコストを区分し,それまでのコストはすべて取得価額にしない(つまり費用処理)で,しかも税務調整も行わない場合(会計処理イコール税務処理)にはトラブルが起こりえます。この場合には,税務の考え方を念頭において,調査等の場合には説得力ある説明が要求されます。
つまり,ある一定時点を定めてその前後に生じた製作費用という区分にによって取得価額の構成の適否を判断せずそれぞれの開発プロセスについて実態に応じて判断し,税務上も費用になるかどうかについても,費用を支出した目的や個々の取引実態に応じて判断すべきです。
例えば,開発活動のプロセスを,下記のように分けたとします。
企画検討段階
システム設計段階(要件定義,論理設計)
システム開発段階(物理設計,プログラム開発,システムテスト)
導入段階?
この場合,一般論としては,企画検討段階のコストは会計上も税務上も取得価額に含めなくてもよいとも思われます。ただし,税務上トラブルがないように,その実態を吟味する必要はあるでしょう。つまり,税務上トラブルになりやすいポイントについて説得的に当局に説明できればよいです。
つまり,
企画検討段階を区分できること
そのうえで,これは取得価額にならないという理由付けができること
これにより,費用処理が可能であると思われます。
平成21年3月