ソフトウエアの除却とそのタイミング
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税務上の取り扱い
新しいソフトウエアを完成させた場合や,既存のソフトウエアのバージョンアップに伴って旧バージョンの販売を中止する場合には,従前のソフトウエアや旧バージョンの残存簿価を除却処理することが認められるかどうかが問題になります。この点,法人税基本通達7-7-2の2(ソフトウエアの除却)では以下のように規定しています。
「ソフトウエアにつき物理的な除却,廃業,消滅等がない場合であっても,次に掲げるように当該ソフトウエアを今後事業の用に供しないことが明らかな事実があるときは,当該ソフトウエアの帳簿価額(処分見込価額がある場合には,これを控除した残額)を当該事実が生じた日の属する事業年度の損金の額に算入することができます。
(1)自社利用のソフトウエアについて,そのソフトウエアによるデータ処理の対象となる業務が廃止され,当該ソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合,またはハードウエアやオペレーティングシステムの変更等によって他のソフトウエアを利用することになり,従来のソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合。
(2)複写して販売するための原本となるソフトウエアについて,新製品の出現,バージョンアップ等により,今後,販売を行わないことが社内稟議書,販売流通業者への通知文書等で明らかな場合」
ここで,新たなソフトウエアが既存のソフトウエアをベースに開発されたものであれば,その既存のソフトウエアについて除却は認められないとされます。また,例えば新たなソフトウエアが市場に出ても既存のソフトウエアが利用することが予定されている場合にも,その既存のソフトウエアについて除却は認められないとされます。
実務上の留意点
税務上のトラブルが起こりうるのは,新しいソフトウエアが従前のソフトウエアをベースに開発されたものである場合や,一部で今後もまだ利用されることが予定されているソフトウエアです。このようなものは,通常は除却が認められないことになります。この点については,しっかりと説明できるようにする必要があります。また,目に見えないものだけに,通達で例示されているような書類を整備するとともに,ソフトウエアの除却に対して,適切な処理規定を設け,またこれを整備運用することが重要です。
また,バージョンアップが続く場合には,上記の論理で旧バージョンアップ分を全部除却できなくとも,旧バージョンに特有のコストがあり,これが特定できれば,その部分を一部除却しうる余地もあるでしょう。ただし,これを対外的にどう説明できるかが重要なキーになります。
平成21年3月