ソフトウエアの取得価額を構成するコストはどのようなものか
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税務上の取扱い
自己の製作に係るソフトウエアについては,以下のコストが取得価額を構成します。
当該ソフトの製作のために要した原材料費,労務費及び経費の額
当該ソフトを事業の用に供するために直接要した費用の額
また,他の者から購入したソフトウエアについて,そのソフトウエアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用の額は,当該ソフトウエアの取得価額に算入しなければなりません。
よって,これを取得価額に算入せず,費用のまま処理すると,申告調整をしないかぎり,税務上トラブル発生ということになります。
実務上の留意点
1 材料費
基本的には発生しないと考えられますが,新製品開発にあたって特別な消耗品等を購入&使用した場合には,これを含めます。
2 労務費(人件費)
個々の社員ごとの月あたり人件費を計算します。
計算方法の一つの例は以下のとおりです。
年収を12等分します。
月あたりの通勤費を計算して加算します。
その額を基準にして会社負担分雇用保険,会社負担分健康保険,会社負担分厚生年金を加算します。
なお,役員であっても,把握することに注意すべきです。役員といえども,開発作業に携わった場合には,これを集計しなければなりません。代表者がエンジニアである企業は少なくありませんが,開発に携わった部分は,これを集計すべきです。
3 経費ないし間接費
主として以下の経費を集計します。
開発部門が負担するものと合理的に算定された事務所家賃や火災保険料や光熱費
間接的な人件費(労災保険など)
開発部門が開発に使用するPCや備品等のリース費
とくに開発に携わった派遣スタッフの費用
新製品開発のための特別なセミナー参加費など
とりわけ重要なのは,コストの大半を占める労務費ですが,理想的なのは各個人で計算して集計する方法です。正確に計算でき,恣意性が少ないからです。
次善の策としては,開発部門の給与額総額を集計し,この合計額から一定の割合で法的福利費(社会保険など)を加算することも考えられます。この方法は比較的計算は簡便ですが,「一定の割合」である程度ドンブリになってしまいます。
また,経費については,どこまで厳密にコストを抽出し,また,これをどのような基準で,取得価額と費用とに配分するかをメリットデメリットを勘案しながら判断していく必要があります。
とはいえ,やはり会計と税務の目的は違うわけで,会計ルールも一般に公正妥当な範囲であれば,それぞれ企業の特性や実情に応じて利益を算定すべきです。しかも,ITの急速な発達により,計算経済性の(少なくともハード面の)問題はかなり解決されています。とすれば,法人税の申告書できちんと調整ができていれば,税務ルールべったりの会計をする必然性はないということになります。
平成21年3月