特別損害や賠償の限度額について
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質問
X社は,プログラム開発案件を受注しようとしていますが,先方であるY社から開発スケジュールが遅れた場合の補償について問い合わせがありました。
ソフトウェア開発の場合,相手のビジネスプランにまで立ち入ることになるので,なんらの取り決めもない場合,通常生じる損害に加え,予見可能な特別損害についても請求されかねないとも思えます。
X社が現在使用している基本契約書は,特別損害や賠償の限度額については何も記述していません。
この際,X社の基本契約書に,なんらかの取り決めを盛り込んだほうがよいのでしょうか?
回答
「重大な過失があっても免責されるという特約は無効」というのが損害の不担保の特約に関する裁判所の考え方です。
民法や会社法の条文には直接このように表現するものはありません。しかし,そのまま効力を認めると一方にとって著しく酷となるような当事者間の合意は,信義誠実・衡平という観点から許容できないとされているのです。
まず,特別損害についてですが,X社が予見しうる範囲では損害賠償の射程内となります。
次に,賠償額の限度を定める特約についてですが,例えば○ヶ月分の報酬を限度とするとした場合,全く責任を負わないという言わば「無責任な」(不当性の高い)ものでないこと,相手方はそれを承知して契約したことから,直ちに無効とはいえないでしょう。
よって,損害という結果発生がある程度やむを得ない事情に基づくときは,かかる特約はそのまま認められうると考えられます。
しかし,実際に発生した結果に与えるX社の違法性・責任が大きい場合,賠償額の限度の設定は相手方に酷で無効だと判断される可能性があります。
このように,損害論については,事案抜きでは論じられない部分があるのです。
しかし,X社の立場からすれば,制限を設ける特約をしておくほうがトラブルが実際生じた場合に有利であることは間違いありません。
不当に一方的に有利な特約は無効と解釈されやすいことを十分意識して,特約の条項を設けるかどうかを検討するとよいでしょう。