民法改正によって請負人(受託者)の瑕疵担保責任が変わると聞きました。どう変わるのでしょうか。
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はじめに
今般の民法(債権法)改正(2020年4月1日施行)により、請負人の瑕疵担保責任に関する規定が変わりました。そこで今回は、改正規定のなかでも、会社間でよく利用される請負業務委託契約において影響力が大きい改正規定の紹介とポイントを解説します。
改正法では「瑕疵」という文言が使われなくなります
まず、現行法で使われている「瑕疵」という文言は、改正法では「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」という文言に置き換えられます。
したがって、改正法の適用場面と、契約条項の適用場面を整合させる観点から、現在使用している契約条項における「瑕疵」の文言を「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」旨の文言に置き換えることを推奨します。もっとも、「瑕疵」という文言の使用が禁止されるわけではありませんから、継続して使用することも可能です。注文者(業務委託者)の救済手段が増えました
(1)請負人(受託者)の仕事に瑕疵(説明の便宜上使用します)があった場合、現行法では、注文者(委託者)が救済手段として、請負人(受託者)に対して、瑕疵修補、損害賠償、解除を請求することができましたが(現行民法第634条1項、第635条)、改正法ではこれらに加え、不足分・代替物の引渡し請求(履行の追完請求)や代金減額請求が認められるようになりました(改正法第599条、562条)。
したがって、現在使用している契約条項における救済手段条項が現行法に沿った内容で規定されている場合は、改正法に合わせ漏れがないよう救済手段を列挙することを推奨します。なぜなら、現状のままにしておくと、改正法で認められる注文者(委託者)の救済手段を契約によって制限しているという解釈がなされ、改正法規定の救済手段を主張することができなくなってしまう可能性があるからです。
(2)また、これらの救済手段のうちいずれの手段を取るかは一義的に注文者(委託者)に選択権があるとされています(改正法第559条、562条)。
他方で請負人(受託者)は、注文者(委託者)に不相当な負担を課すものでないときは、注文者(委託者)の請求した方法と異なる方法で履行を追完することができます(改正法第559条、562条1項ただし書)。
したがって、どのような救済手段を取るかについて揉めないよう、現在使用している契約条項に改正法に沿った内容の救済手段条項を規定する場合には、救済手段に優先順位をつける規定や、請負人(受託者)に選択権を与える規定を置き、救済方法をあらかじめ定めておくことを推奨します。損害賠償責任を負うのは帰責事由がある場合のみになりました
現行法では、無過失であっても瑕疵担保責任としての損害賠償責任を負っていましたが(現行法第634条2項)、改正法では帰責事由がある場合にのみ債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことになりました(改正法第559条、564条)。
したがって、今後、損害賠償責任を負う場面を改正法に沿った内容に限定するならば、現在使用している契約の損害賠償責任条項に帰責事由がある場合のみ損害賠償責任を負う旨の文言を追記することを推奨します。救済手段の請求は事前に「通知」する必要があります
現行法では、注文者(委託者)は仕事の目的物の引渡しを受けてから1年以内に瑕疵の修補又は損害賠償請求または契約解除を行う必要がありましたが(現行法637条)、改正法では、数量不足の場合を除いて、不適合を知ってから1年以内に不適合の事実を「通知」すればよいことになりました。
したがって、現在使用している契約の通知義務条項がある場合は改正法に沿った内容に変更することを推奨します。おわりに
以上のように、今般の民法改正で規定は大幅に改正されており、規定内容が現行法と大きく異なります。そのため、今後は現在使用している契約条項(通常現行民法の内容に沿って作成されているものが多いです)の内容と改正民法の内容に開きが生じやすく、それが原因で争いが生じる可能性があることが懸念されます。
そのため今回紹介した改正内容を参考にしつつ、現在使用している契約条項の見直しに取り組まれるとよいと思います。
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