タイム・オブ・エッセンス条項(Time of Essence)にはどのような意味があるのですか?
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以下のような条項をタイム・オブ・エッセンス(TOE)条項といい,英文契約書でときどき目にする条項です。
Time is of the essence in the performance of this Agreement.
本契約の債務の履行の上で,期限は重要な要素である。
- TOE条項の趣旨
本条項は,債務者が契約上の債務の履行を遅滞した場合に,債権者が直ちに契約を解除して,それ以降に履行の提供を受けても,その受け入れを拒絶することができるようにするという趣旨があります。
多くの契約では,債務者が負う債務に履行期限が定められます。履行期限を過ぎても債務を履行しない場合は,債務不履行となります。この場合債権者は,契約を解除して,これにより被った損害の賠償を求めることができます。もっとも,履行期限をわずかに過ぎた程度であれば,通常,債権者に重大な不利益はなく,債務不履行とまではいえません。よって債権者は債務者の債務の履行を受け入れなければならず,契約を解除することもできないでしょう。
しかしながら,履行期限を1日でも過ぎてしまった場合,その後に債務を履行されても,もはや契約をした意味がない場合があります。たとえば,特定の日に開催されるイベントで使用するための商品の配達を依頼した場合,配達が遅れてしまってイベントが終わってから商品が届いても,もはや契約をした目的を達成することはできません。このような場合に債権者は,履行期限を少しでも過ぎたことを理由に,契約を解除できるようにしておく必要があります。
このように,契約において履行期限を徹底遵守することが重要であることを,両当事者間で合意しておくために設けるのが,TOE条項です。
なお,日本民法上は,このような契約上の債務を定期行為(「契約の性質又は当事者の意思表示により,特定の日時または一定の期間内に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合」(民法542条))と定めています。ある債務が定期行為にあたるかは,契約の内容や当事者の意思表示から判断されます。
同様に,英文契約書でも単にTOE条項の有無だけでなく,契約の内容や当事者の意思表示を考慮して履行期限の徹底遵守が重要かどうかを判断することとなると思われます。しかし通常は,TOE条項が明記されていないかぎり履行期限が重要な要素であるとは解釈されませんし,とくにEntire Agreement(完全合意条項)がある場合には,契約締結以前の口頭合意などは意味をなさなくなるので,本条項の有無が決定的に重要となるといえます。
- 効果
TOE条項が定められている契約において債務者が履行期限を過ぎても債務を履行しない場合,重大な契約違反(material breach)と扱われます。債権者は,債務者に重大な契約違反があったことを理由として,契約の無催告解除,およびこれにより被った損害の賠償を求めることができます。
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