日本企業が中国企業と取引をする場合、契約書の裁判管轄はどのように定めたらよいでしょうか。
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日中間の契約では、裁判所の判決は強制執行することができないので、仲裁手続にするのが一般的です。
日中間には、判決を相互に失効することができることを定めた条約を締結しておらず、中国の最高人民法院は、「日本との間に互恵関係は存在しない」として日本の裁判所の判決に基づいて中国国内で強制執行をすることはできないとしています。
東京地裁も、「中国で日本の裁判所の同種判決が承認、執行される余地はなく、日本と中国の間には相互の保証があるとは認められない」として、人民法院が損害賠償を命じた判決に基づき、日本国内でその賠償金について財産差し押さえなどの強制執行は認められないと判断しています(「東京地裁平成27年3月20日判決)。
したがって、相互に相手国の裁判所の判決に基づいて強制執行をすることはできません。
強制執行することができないのでは、権利を実現することができませんので、紛争が生じたときに裁判手続を行うのは適当ではありません。
他方、日中両国は、外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約に加盟しているため、仲裁手続に基づく仲裁については、強制執行することができます。
このため、契約書においては、相手国の仲裁機関や、香港、シンガポールなどの第三国の仲裁機関において紛争を解決することとするケースが一般的です。参考:
民事訴訟法第118条(外国裁判所の確定判決の効力)
外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。民事執行法第24条 (外国裁判所の判決の執行判決)
外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。
3 第一項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法第百十八条 各号に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。
4 執行判決においては、外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約
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