当社では個人事業者向けに廉価なクラウドサービスを提供しています。ユーザーと当社の関係は当社が一方的に定めた利用規約が適用されるものとしていますが、有効でしょうか。
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御社に一方的に有利な免責条項は、無効となる可能性があります。
解説
第〇条(免責)
当社は、契約者その他いかなる者に対しても、本サービスの提供に必要な設備の不具合・故障等によって発生する損害について、一切の責任を負わないものとします。御社クラウドサービス利用規約には、このような条項が含まれていませんでしょうか。これは、クラウドサーバの故障等によって、ユーザーの保存していたデータが消失した場合でも御社は一切の損害賠償責任を負わないというものです。
このような免責規定は、御社に一方的に有利な条項といえ、契約上の公平さを欠くため、その効力が認められない場合があります。その判断は具体的事情によりますが、一般論としては、御社の過失の程度や契約内容全体から免責規定の効力を考えることになります。例えば、次のような事情があれば、免責規定は有効といえます。
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- 御社の過失の程度が軽いこと
- 免責条項があることを前提に、低廉な利用料でサービス提供を行っていたこと
- 事前にユーザーにデータのバックアップを指示しており、それが可能であったこと
一方で、次のような事情があれば、免責規定は無効と判断されてしまうでしょう。
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- 御社の積極的な行為によって損害が生じたこと
- 御社の過失の程度が重大であること
- ユーザーが自衛手段により損害を避けることは困難であったこと
なお以下のような責任限定条項についても、結果として御社が負う賠償責任の額が、生じた損害に比べてわずかである場合には、同じ問題が生じます。
第〇条(責任限定)
当社が、契約者に対して、本サービスの提供に必要な設備の不具合・故障等によって発生する損害について責任を負う場合、その範囲は損害発生時点から遡って過去〇か月の間に、契約者が当社に対して支払った利用料の総額を限度とする。事業者と消費者との契約にあっては、消費者保護のため、消費者に一方的に不利な契約条項が無効とされることがあります(消費者契約法など)。その場合と比べると事業者間の契約関係では自由に契約内容を合意することができます。しかし、事業者間契約であっても、利用規約を用いて自社にとってあまりに有利な条項を一方的に定めてしまうと、公平の理念に反し、裁判所によって無効とされてしまうということです。
現在(May. 2014)改正作業中の債権法中間案でも、利用規約に「相手方に過大な不利益を与える契約条項」が含まれる場合、当該条項が無効となることがあると考えられており、一方的な免責条項や責任限定条項がその例として挙げられています。利用規約を用いた契約に関して、判例や学説の示していた見解が民法上のルールとして定められることになりそうです。
なお、契約条項の有効性を考える前提として、契約締結の際に利用規約の内容が契約に組み入れられるような手続を行っていることが必要です(詳しくは、Q当社ウェブサイトで、利用規約を用いた契約の...。をご覧ください。)。
参考
東京地裁平成13年9月28日判決
東京地裁平成21年5月20日判決 -
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