契約書に印紙を貼付しないと、契約は無効になりますか。電子契約の場合には、印紙はどうしたら良いですか。
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1 はじめに
契約においては、契約書に印紙を付して手続を進めることがあります。このように印紙を付する法的根拠は、印紙税法第2条です。
本記事では、①印紙税法の内容、②印紙を適切に付さなかった場合の帰趨、③電子契約の場合の印紙の要否について、具体例を示しながら解説します。
2 印紙税法の内容
印紙税法(以下、「法」といいます)第2条及び第3条は、以下のとおり定めています。
(課税物件)
第二条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
(納税義務者)
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
2 一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合には、当該二以上の者は、その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。
国税庁のホームページには、上記に基づく印紙税額の一覧表が掲載されています(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm)。
文書の種類及び文書に記載された契約金額によって、印紙税額が定められています。
3 印紙を適切に付さなかった場合の帰趨
(1)契約の有効性
契約とは、当事者の合意で成立するものですので、契約書に印紙を付さないことのみをもって契約が無効となることはありません。
(2)過怠税
法には、下記のとおり、過怠税の定めがあります。
(印紙納付に係る不納税額があつた場合の過怠税の徴収)
第二十条 第八条第一項の規定により印紙税を納付すべき課税文書の作成者が同項の規定により納付すべき印紙税を当該課税文書の作成の時までに納付しなかつた場合には、当該印紙税の納税地の所轄税務署長は、当該課税文書の作成者から、当該納付しなかつた印紙税の額とその二倍に相当する金額との合計額に相当する過怠税を徴収する。
2 前項に規定する課税文書の作成者から当該課税文書に係る印紙税の納税地の所轄税務署長に対し、政令で定めるところにより、当該課税文書について印紙税を納付していない旨の申出があり、かつ、その申出が印紙税についての調査があつたことにより当該申出に係る課税文書について国税通則法第三十二条第一項(賦課決定)の規定による前項の過怠税についての決定があるべきことを予知してされたものでないときは、当該課税文書に係る同項の過怠税の額は、同項の規定にかかわらず、当該納付しなかつた印紙税の額と当該印紙税の額に百分の十の割合を乗じて計算した金額との合計額に相当する金額とする。
3 第八条第一項の規定により印紙税を納付すべき課税文書の作成者が同条第二項の規定により印紙を消さなかつた場合には、当該印紙税の納税地の所轄税務署長は、当該課税文書の作成者から、当該消されていない印紙の額面金額に相当する金額の過怠税を徴収する。
これは、下記のことを意味します。
ア 適切な印紙を貼付せずに契約書を相手方に交付した場合には、印紙税額の3倍に相当する過怠税が課されます。
ただし、①課税文書の作成者が所轄の税務署長に対して、作成した文書につき印紙税を納付していない旨を申し出たこと②その申し出が、印紙税額の3倍に相当する過怠税が課されうることを予知してされたものでないこと、の2つの要件が認められれば、過怠税の額は、印紙税額の1.1倍になります。
イ 印紙を貼付したとしても、適切な消印(契約書と収入印紙の両方にかかるような消印)がない場合には、貼付された印紙の額面金額に相当する過怠税が課されます。
すなわち、契約書の作成時に印紙を適切に付さなかった場合には、最大で印紙税額の3倍の過怠税が課されるおそれがあります。
4 電子契約の場合の印紙の要否
(1)結論
電子契約の場合には、印紙は不要だと考えられます。
(2)理由
法3条(上記参照)は、文書の「作成」者が、「作成」した文書につき印紙税の納税義務を定めています。また、ここでいう「作成」の意義は、印紙税法基本通達第44条に定められています。
そして、電子契約における契約書のやりとりは、「文書」の「作成」にあたらないと考えられています。「文書」は「紙」であることが前提となっているからです。
上記から、印紙税の納税義務は発生しないと考えられているのです。
このことについては、下記の国税庁の見解が参考になります。
https://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/bunshokaito/inshi_sonota/081024/02.htm
以上から、経費を節約したい企業としては、電子契約を用いて印紙代のコストをカットすることが考えられます。
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