東京都で事業を行なっています。取引先との間で契約書を作成する際には、暴力団排除条項を入れた方が良いですか。
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1 はじめに
一般に、暴力団排除条項が入った契約書はよく見られますが、そのような条項が入っていない契約書も取り交わされています。暴力団排除条項は、必ず契約書に入れなければならないのでしょうか。
また、取引先から、「暴力団等反社会的勢力ではないこと等に関する表明・確約書」等の表題の書面への署名を求められたことのある方もいるかもしれません。このような場合、この書面への署名は、法律上どのような意味を持つのでしょうか。
本記事では、①暴力団排除条項とは何か、②契約書には暴力団排除条項を入れなければならないのか、③「暴力団等反社会的勢力ではないこと等に関する表明・確約書」等の表題の書面への署名が持つ法律上の意味について、解説します。
2 暴力団排除条項とは何か
暴力団排除条項とは、契約関係から暴力団を排除する目的で設けられる条項をいいます。
相手方に自らや関係者が暴力団等の反社会的勢力でないことなどを表明保証させ、表明保証に反した場合には無催告で契約を解除できるように定めることが一般的です。
民法上は、契約を解除したい場合には、原則として予め相手方に対して催告をしなければなりませんが、この催告を不要とする取り決めをしておくことで、より契約を解除しやすくして、暴力団との関係を速やかに断てるようにするということです。
3 契約書には暴力団排除条項を入れなければならないのか
(1)暴力団排除条項を定める義務の根拠
東京都暴力団排除条例18条2項は、以下のように定めています。
(事業者の契約時における措置) 第18条 2 事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。 一 当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。 二 工事における事業に係る契約の相手方と下請負人との契約等当該事業に係る契約に関連する契約(以下この条において「関連契約」という。)の当事者又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約の相手方に対し、当該関連契約の解除その他の必要な措置を講ずるよう求めることができること。 三 前号の規定により必要な措置を講ずるよう求めたにもかかわらず、当該事業に係る契約の相手方が正当な理由なくこれを拒否した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約を解除することができること。
すなわち、東京都暴力団排除条例の適用対象となる事業者は、契約書を作成して契約をする場合には、上記の条例の内容を含む暴力団排除条項を定める努力義務を負っているのです。
なお、上記では東京都暴力団排除条例を例に挙げましたが、暴力団排除条例は、47都道府県それぞれで制定されています。神奈川県暴力団排除条例第22条第2項のように上記の条例の内容と類似する条例を定めている県もありますが、条例の内容は各都道府県によって異なりますので、詳しくは各都道府県の暴力団排除条例をご確認ください。
(2)まとめ
上記のとおり、東京都暴力団排除条例の適用対象となる事業者は、暴力団排除条項を定める努力義務を負っています。努力義務ですので、暴力団排除条項を定めなくともペナルティはありません。
もっとも、この努力義務を果たすことはコンプライアンスの徹底につながるといえます。また、逆に、この努力義務を果たさないことについて監査役等による監査や、M&A、IPOのデューデリジェンスを受ける際に指摘される可能性もあります。
そのため、契約書には暴力団排除条項を入れることをお勧めします。
4 「暴力団等反社会的勢力ではないこと等に関する表明・確約書」等の表題の書面への署名が持つ法律上の意味
「暴力団等反社会的勢力ではないこと等に関する表明・確約書」等の表題の書面への署名は、その名のとおり、自らが暴力団等反社会的勢力ではないこと等について表明保証をするという法律上の意味があります。
上記書面に、表明保証違反があった場合には契約を解除できる旨の定めがあるのであれば、契約後に暴力団等反社会的勢力との関係が判明した場合には、相手方が契約を解除できることになります。
相手方がこのような書面への署名を求める背景には、上記で説明した暴力団排除条例があると考えられます。必要に応じて同様の内容の書面への署名を相手方に求めて、双方が署名するという対応をするとよいでしょう。
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