プライベート・エクイティファンドの組成を検討している。どのような法的主体を組成すべきか。
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1 プライベートエクイティファンドとは
プライベートエクイティファンドとは、複数の投資家から資金を集め、その資金を非上場会社に投資するファンドです。
プライベートエクイティファンドは、非上場会社に投資して、その投資先の株式や持分を取得し、企業価値を向上させた後に、その株式や持分を売却して収益を得ることを目的としています。プライベートエクイティファンドをめぐるステークホルダーには、
①投資家(出資者)
②投資家(運営者)
③投資先
がいます。投資家(出資者・運営者)
ファンドは、複数の投資家によって組織されます。
投資家は、多くの場合、出資のみして運営に関与しない投資家と、出資して運営も行う投資家に分けられます。投資先
プライベートエクイティファンドの投資先は、非上場会社です。
プライベートエクイティファンドは、投資先である非上場会社に資金を提供するとともに、経営に関する助言・サポートを行い、投資先の企業価値の向上を目指します。
例えば、ベンチャーキャピタルファンドは、IPOやM&Aを目指すベンチャー企業に対して投資を行って企業価値を向上させ、IPOやM&Aを実現した場合には、株式を譲渡することにより収益を得ます。2 投資ビークルを検討する必要性
プライベートエクイティファンドの法的な構成として、主な選択肢としては、以下のようなものがあります。
①民法の組合契約に基づく任意組合
②商法上の匿名組合契約に基づく匿名組合
③投資事業有限責任組合法の投資事業有限責任組合契約に基づく投資事業有限責任組合
④有限責任事業組合法の有限責任事業組合契約に基づく有限責任事業組合プライベートエクイティファンドをどのような法的構成で組成するのかについては、法的な観点と、税務的な観点を検討する必要があります。
法的な観点
法的には、有限責任性が確保できるのかという点を考慮する必要があります。
有限責任とは、各投資家が負担する責任が出資した範囲に限定される場合をいいます。
有限責任であれば、出資した以上の責任を負わないため、投資家のリスクが限定されるので、広く投資家を集めることができます。他方、無限責任とは、ファンドに生じた責任について、各投資家が制限なく負担しなければならないことをいいます。
このため、ファンドに生じた債務については出資金額を超えるものについても、全投資家が出資持分に応じて責任を負います。
投資家らは、合意によって責任の割合を変更し、ある投資家には責任を大きくし、ある投資家には責任を小さくすることもできますが、対外的にはこのような変更を主張することができません。
このため、出資の範囲を超えて責任を負わないようにするためには、無限責任ではなく、有限責任にすることになります。なお、ファンドが対外的に責任を負担しないようにすることによって、無限責任のリスクを低減することもできます。
例えば、借り入れをせずに出資金のみで運営すれば対外的に借り入れ債務を負担することはありませんし、運営の方法が法令や契約に従って適切にされていれば損害賠償義務を負担することもないので、ある程度限定的な組合員のみで構成される小規模なファンドなどにおいては、無限責任を負担することに問題がない場合もあり得るところです。税務的な観点
税務的な観点では、ファンドに課税がされることを回避するべきです。
ファンドの収益についてはファンドに法人税が課税されてしまうので、ファンドの収益に課税されず、構成員(投資家)に課税される(パススルー課税)ビークルを選択するべきといえます。3 各ビークルのメリット・デメリット
①民法の組合契約に基づく任意組合
民法の組合契約に基づく任意組合では、パススルー課税になりますので、税務的にはメリットがあります。
また、法的には、投資事業有限責任組合などに比べて合意によって自由に定めることができる範囲が大きいといえる点もメリットです。
他方、組合員は、全員無限責任となることがデメリットです。②商法上の匿名組合契約に基づく匿名組合
匿名組合では、匿名組合員には対外的な権利義務が生じないので、有限責任といえます。
また運営上も投資事業有限責任組合のような制限がないため、自由度が高い点もメリットです。しかし、匿名組合では、匿名組合員への分配金には源泉徴収税が課されてしまいます。
また、営業者と匿名組合員の個別の契約を結ぶ必要があることや、ファンドのビークルとして一般的である方式ではないことなどから説明コスト等が生じる点がデメリットといえます。③投資事業有限責任組合
投資事業有限責任組合は、無限責任組合員は無限責任を負う一方、有限責任組合員は有限責任にとどまるため、参加者を募りやすいです。
また、パススルー課税であるため、税務上もメリットがあります。しかし、投資事業有限責任組合法に基づいて設立し、運営しなければならないので、民法上の組合などに比べて自由度がも高くありません。
有限責任性を確保するためには登記も必要であるので、登記費用等も生じます。④有限責任事業組合
有限責任事業組合では、全構成員が有限責任になり、パススルー課税である点がメリットです。
しかし、全員で共同して事業を遂行しなければならないので、組合の業務執行を行うためには全員の同意が必要になります。
このため、出資のみを行い運営に関与しない投資家を想定する典型的なファンドには適していない場合があります。4 最後に
以上のようにファンドの組成はケースバイケースであり、上記以外に考慮すべき事項もあるので、法務・税務の専門家に相談して進めるべきといえます。
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