不可抗力条項はどのように規定すればよいですか。
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不可抗力条項(Force Majeure)とは、地震、津波、戦争など契約当事者の合理的な支配を超えた事象が発生し、債務の履行ができない、または債務の履行が遅延した場合に、債務者が債務不履行責任や履行遅滞責任を負わない旨などを定める条項です。
「不可抗力」はその範囲が必ずしも明確ではないので、どのような場合を不可抗力とするかを具体的に契約書に明示します。幅広く網羅的に不可抗力事由を列挙するのが一般的です。
【例】
Neither party shall be liable to the other party for any delay or failure in performing its obligations hereunder due to causes beyond its reasonable control ("Force Majeure"), including but not limited to act of God, acts of government or governmental authorities, compliance with law, regulations or orders, fire, storm, flood or earthquake, war (declared or not), rebellion, revolution, or riots, or strike or lockouts.
【訳】
いずれの当事者も、相手方に対し、自己の合理的な支配が及ばない事由(以下「不可抗力」という。)による本契約に基づく自己の義務の不履行または履行遅滞について、責任を負わない。不可抗力には天災、政府または政府機関の行為、法律、規制または命令の遵守、火災、暴風雨、洪水もしくは地震、戦争(宣戦布告の有無を問わない。)、反乱、革命もしくは暴動、またはストライキもしくはロックアウトを含むが、これらに限定されない。
上記では、不可抗力による債務不履行・履行遅滞を免責する旨定めています。また、不可抗力として、天災(act of God)、政府または政府機関の行為(acts of government or governmental authorities)、法律、規制または命令の遵守(compliance with law, regulations or orders)、火災(fire)などを明示しています。
不可抗力事由が発生した場合、債務の不履行または履行遅滞について免責されますが、債務そのものがなくなるわけではありません。また、不可抗力事由が発生しても、契約上の特約がない限り解除権は発生しないのが一般的なので、長期間にわたって不可抗力事由が解消されない時は契約当事者を当該契約から解放させるべき場合は、不可抗力が発生した場合の解除権についても定めておきます。不可抗力が何日継続したら解除権が発生するのか、解除権の行使方法などを定めます。
【例】
If the Force Majeure continues for more than thirty (30) days, the other party can terminate this Agreement immediately by giving written notice.
【訳】
不可抗力が30日を超えて継続する場合、相手方当事者は書面で通知して本契約を直ちに解除することができる。
国際契約では、当事者間で特段合意していなくとも、原則として、不可抗力の事態が生じた場合の金銭債務の不履行は免責されません。しかし、いざ不可抗力事由が生じた場合に、契約の解釈をめぐって当事者間で争いになることを避けるため、金銭債務については不可抗力条項が適用されない旨明示しておくことも考えられます。
【例】
The provisions of this Article shall not relieve either party of obligations to make payment.
【訳】
本条の規定は、支払債務からいずれの当事者も解放しないものとする。
また、不可抗力が生じた場合に、債務を免除される当事者に対し、その影響を最小限にとどめる旨の努力義務を定めることも考えらえます。
【例】
The affected party shall make all reasonable efforts to reduce the effect of any failure or delay by the event of Force Majeure.
【訳】
影響を受けた当事者は、不可抗力による不履行または履行遅滞の影響が軽減されるよう合理的なあらゆる努力を尽くさなければならない。
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