「贈賄禁止条項(Anti-Bribery)」はなぜ必要なのでしょうか。
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最近では、公務員に対するものだけでなく、企業間の取引におけるリベートも禁止する法制もあり、リベートに関しては十分注意する必要があります。
日本法人が、海外で現地の公務員に賄賂を提供した場合には,不正競争防止法が適用され、米国法人であれば米国の海外腐敗行為防止法(FCPA),英国法人であれば英国の増収賄防止法(UKBA)等が海外での行為に適用され、現に賄賂を提供した個人に対する罰則に加え,会社に対しても巨額の罰金支払いを命じられることがあります。
賄賂にあたるかどうかは,現地の法規制や慣習により異なることから,日本では社交儀礼の範囲と考えられるものについても,現地ではそのように扱われないことがあります。逆に,賄賂の授受が常態化してしまっているような場合もあります。通常の行政サービスに係る手続きの円滑化のみを目的とした支払い(いわゆるFacilitation Payments)の,法律上の取扱いも各国で異なります。よって,贈賄禁止に反しないよう,適切にルール策定・教育・周知徹底を行う必要があります。
そして自社が贈賄を行っていない場合でも,契約の相手方である提携パートナー,代理店,販売店等が贈賄を行った場合には,関係する自社の信用失墜につながります。さらには自社が贈賄事件に巻き込まれてしまい,最悪のケースとしては自社も共犯として処罰されてしまうおそれもあります。
そこで,契約の相手方に対して贈賄禁止を徹底するよう,契約で約定しておくことが必要になります。条項の例は,以下のとおりです。
The parties and its agent, sub-contractors, consultants or employee shall:
(a) comply with all applicable laws, regulations, statutes, and codes relating to anti-bribery and anti-corruption including but not limited to Japan Unfair Competition Prevention Act, the UK bribery Act 2010 and the US Foreign Corrupt Practices Act ("Bribery Laws");
(b) not engage in any conduct which would constitute an offence under any of the Bribery Laws;
(c) shall have, maintain, and enforce throughout the term of this Agreement its own policies and procedures, to ensure compliance with the Bribery Laws and the Bribery Policies.両当事者及びその代理人,請負人,コンサルタントまたは従業員は,以下について約定する。
(a) 贈賄・腐敗禁止に関係するすべての適用可能な法,規則,制定法,法典(日本不正競争防止法,米国海外腐敗行為防止法,英国贈収賄防止法を含むが,これに限られない。以下「贈賄関係法」という。)を遵守すること
(b) 贈賄関係法違反となるいかなる行為も行わないこと
(c) 贈賄関係法の遵守を確保するため,本契約期間中,各自贈賄防止基本指針及び手続を策定し,これを維持し遵守すること賄賂の授受は,会社の代表者が直々に行うことは少なく,海外の現地で責任者の地位にある者,またはその者からさらに委託を受けた請負人やコンサルタントが行うことが多いでしょう。よって契約の相手方に対しては,会社がその代理人,請負人,コンサルタント,従業員に対してきちんと贈賄禁止を遵守させることまで求めるべきです。
また,契約の相手方が本条項に違反した場合には無催告解除ができるよう,本条項違反を解除事由に加えておくべきです。
さらに,これにより生じた損害・費用について損害賠償請求まで可能なようにしておくとよいでしょう。条項例は以下のとおりです。
The party shall indemnify the other party and its directors, officers, agents and employees against any and all liabilities, losses and expenses, including any civil or criminal fines imposed by any relevant government or regulatory authority and any legal fees, costs and expenses, which the other party and its directors, officers, agents and employees may incur as a result of the party's breach of this clause.
当事者は,本条項違反の結果,他方当事者及びその取締役,執行役,代理人及び従業員らが被った損害,費用(政府又は監督機関により課せられた民事又は刑事上の罰金,法的手続上の費用,弁護士報酬その他の費用を含む)を賠償しなければならないものとする。
贈賄リスクを防止するためには,自社で「贈賄防止指針」を決定し,コンプライアンス・プログラムを策定することが有用です。その際には,経産省が公表している「外国公務員贈賄防止指針」が参考になります(http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/zouwai/shishin.html)。
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