当社では、競業避止義務契約書の作成を検討していますが、その際に注意すべき点はありますか。
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契約の有効性が後々争われないように、(1)企業側の守るべき利益の存在、(2)従業員の地位、(3)地域的な限定、(4)競業避止義務の存続期間、(5)禁止される競業行為の範囲、(6)代償措置の存在の点に注意してください。
解説
競業避止義務契約の有効性が裁判で争われるケースは少なくありません。そのため、会社としては、紛争予防のため、経済産業省の指針(下記「参考」欄)に適した内容にすべきです。以下にポイントを示します。
一般論としては、企業側に守るべき利益があることを前提として、従業員の職業選択の自由を過度に制約しないよう配慮され、従業員に対する必要最小限度の制約にとどまる内容のものであれば、有効と考えられます。
- 企業側の守るべき利益の存在
不正競争防止法上の「営業秘密」に限定されず、営業秘密に準じるほどの価値を有する営業方法や指導方法等に係る独自のノウハウも含まれる傾向にあります。 - 従業員の地位
従業員全てを対象にした場合はもちろん、単に職位を特定しただけでも合理性は認められにくく、企業側の守るべき利益を保護するため、競業避止義務を課す必要があった従業員であるかという点が判断されています。 - 地域的な限定
業務の性質等に照らして合理的な絞込みがなされているかが問題とされています。 - 競業避止義務の存続期間
従業員の不利益の程度を考慮した上で、業種の特徴や、企業側の守るべき利益を保護する手段としての合理性等が判断されています。 統計的には、1年以内の期間は肯定的な傾向にあります。 特に近時の事案では、2年の期間について否定的判断がなされる例があります。 - 禁止される競業行為の範囲
一般的・抽象的に競業企業への転職を禁止するような規定は合理性が認められにくいです。 一方、禁止対象となる活動内容や従事する職種等が限定されている場合には、合理性が認められやすい傾向にあります。 - 代償措置が講じられているか
裁判所が重視している要素です。 代償措置がないとされた事案では、これを理由の一つに挙げて競業避止義務契約の効力が否定される傾向にあります。 なお、契約書上で代償措置が明確に定義されている例は少ないですが、代償措置と評価できると判断されているケースも少なくありません。
参考
- 企業側の守るべき利益の存在
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