賞与(ボーナス)と異なり、減額(ベースダウン)が難しい点に注意が必要です。
解説
「ベア」とは、基本給の基準(額)を引き上げることをいいます。
ベアは、同一水準における基本給の引上げであり、水準上昇による基本給の引上げである「定期昇給(定昇)」とは異なります。
ベースアップを行うと、人件費が増えることとなりますが、将来、業績悪化等によりベースダウン(賃下げ)を行わなければならない場合に、以下が必要になります。
- 当該労働者との合意を得る(労働契約法9条本文)
- 合意できない場合、①労働者に対する周知、及び、②変更の合理性(労働契約法10条本文)
① 周知の方法は限定されていませんが、他の法令では以下の例を挙げていますので、参考にして
ください(労働基準法施行規則52条の2)。
ⅰ 常時、各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付ける
ⅱ 書面を労働者に交付する
ⅲ 磁気テープ、磁気ディスク等に記録し、その内容を労働者が常時確認できる機器を、
各作業場に設置する
② 変更の合理性は、以下のⅰとⅱの比較較量を基本とし、ⅲやⅳを加味して判断されるため、
それぞれ以下の検討が必要となります。
ⅰ 変更の必要性
→業績悪化、制度変更の必要など
ⅱ 労働者の不利益の程度等
→減額割合、期間の限定など
ⅲ 労働組合・従業員集団との交渉経緯
→労使の十分な協議など
ⅳ 変更の社会的相当性
→監督官庁への届出(労働基準法89条)、
過半数代表等の意見聴取(労働基準法90条)など(労働契約法11条参照)
なお、ボーナスは、企業の業績や労働者の勤務成績に応じて自由に決定でき、減額に特段の手続を要しないのが原則である点で異なります。