当社はインターネット通販会社です。ウェブサイト上に商品を掲載し顧客からの注文も受けたのですが、価格表示が誤っていました。この場合当社は、誤って表示した価格で商品を販売しなければならないのでしょうか。
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顧客からの注文に対して注文承諾のメール等を送信していない段階では、誤表示価格で商品を販売する義務はありません。
解説
通常、インターネット通販サイトの商品売買契約は、
(1)通販会社がウェブサイトに商品内容を掲載する
(2)顧客が商品の購入ボタンをクリックし、購入申込みが通販サイトに届く
(3)通販サイトが購入希望者に対して承諾通知を返し、その承諾が購入者に届く
という過程を経て成立に至ります。(2)の段階では未だ売買契約が成立したとは言えないので、御社に商品を販売する義務は生じません。(3)通販会社の承諾の意思表示が買主に到達した時にはじめて、ウェブサイトに掲載した金額で商品を販売する義務が生じます。
もっとも、多くの通販サイトでは(2)購入希望者が購入ボタンをクリックすると、通販サイトから注文を承諾した旨の自動返信メールが送信され、または注文を承諾する内容の画面が表示されますが、これらのメールや表示画面も(3)承諾通知にあたります。よって、ほとんどの通販サイトでは(2)と(3)は連続して行われ、購入希望者の購入ボタンクリック後すぐに契約が成立するものと思われます。このような事態を避けるには、自動返信メールに「在庫確認の上、改めて正式な承諾通知をお送りします」などといった内容を明記して承諾通知ではないことを明らかにしておくか、契約の成立時期を別途利用規約等で定めておく必要があります。
なお理論上は、売買契約が成立した後であっても、インターネット通販会社の価格誤表示に重大な過失(著しい不注意)がないといえる場合には、「錯誤」として契約を無効とすることができます。しかしながら、事業者である通販会社の価格誤表示に重大な過失がないと認められる場合はほぼ無いと考えられます。また価格誤表示を理由に販売をキャンセルすることは通販サイトの信用低下を招きますので、社会的信用を優先して、誤表示価格のまま販売せざるを得ない場合もあります。
価格誤表示を生じさせないようなウェブサイト管理体制を築くこと、そして価格誤表示が生じてしまった場合に損害の拡大をできる限り抑えるため、いち早く価格誤表示を発見する方策(注文数が激増した場合にアラートを鳴らす等)や、価格誤表示が生じた場合の迅速適切な対応(あらかじめ利用規約にて価格誤表示が生じた場合の通販会社の責任の範囲を定めておく等)を事前に検討しておくことが大切です。
参考
東京地裁平成17年9月2日判決―インターネット通販サイト上の売買契約について受注確認メールがあっただけでは契約が成立していないとされた事例
東京地裁平成23年12月1日判決―ウェブサイトに掲載された旅行ツアー価格に誤表示があったところ、旅行業者が申込者をツアーに参加させなかったことにつき債務不履行が認められた事例
経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(i.29頁以降)
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