NFTを有償のガチャ方式で提供したい。賭博罪は問題にならないか。
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1 NFTとは
NFT(Non-Fungible Token)とは、一般的に、ブロックチェーン上で発行される、非代替性のデジタルトークンをいいます。
NFTは、ブロックチェーン技術をもって、唯一無二のデジタルコンテンツであることが証明されます。
これにより、NFTは、非代替性という特徴があります。
従来、デジタルコンテンツは容易に複製ができるものでしたが、NFTであれば唯一無二のデータを作成することができることになります。
最近では、NFTを用いたアート等が高額で売買される例もあります。このようなNFTを用いたゲームがブロックチェーンゲームと呼ばれています。
ブロックチェーンゲームでは、ゲーム内で使用できるアイテム等がブロックチェーン上のNFTとして発行されます。
このようなNFTのアイテム等は、サービスを超えてブロックチェーン上で取引することができます。従来、ゲーム内のアイテム等は、ゲームの中でしか取引されることはなく、あくまで運営事業者との間の取り決めでしかないものに過ぎませんでした。
他方、ブロックチェーンゲームにおいては、NFTを用いることにより、ユーザーがアイテム等を保有することができ、ゲームを超えて第三者に売買するなど譲渡することができます。ブロックチェーンゲームと従来のゲームの相違点
①利用
ブロックチェーンゲーム:ユーザーは、アイテム等をゲーム外で利用できる。
従来のゲーム:ユーザーはアイテム等をゲーム内でのみ利用できる。②処分
ブロックチェーンゲーム:ユーザーは、アイテム等をゲーム外で処分できる。
従来のゲーム:ユーザーはアイテム等をゲーム内でのみ処分できる。③消滅
ブロックチェーンゲーム:アイテム等は、半永久的に消滅せずに存続する。
従来のゲーム:アイテム等は、サービス終了後は消滅する。2 ガチャでNFTを提供する場合の賭博罪該当性
ブロックチェーンゲームも、従来のゲームと同様に、NFTのアイテム等をガチャ(ランダムのくじのような方法)で取得できる設計を採用することがあります。
ガチャによりアイテムを取得するには、一定の金銭の支払いや、金銭によって購入されるポイント等の支払いなど、有償とすることも多いです。
無償であれば、単にNFTを一方的にもらうことができるだけであるので、賭博罪に該当することはありません。ブロックチェーンゲームで提供されるアイテム等が有償のガチャによる取得できる場合、賭博罪に該当しないかについて注意する必要があります。
賭博罪(刑法185条)の「賭博」は、以下の全てを満たすものと理解されています。① 偶然の勝敗により
② 財産上の利益の
③ 得喪を争うこと
④ 失われ得る財産上の利益が一時の娯楽に供するものでないことブロックチェーンゲームでNFTのガチャを実施すると、ユーザーは、取得したNFTのアイテム等をNFT市場において売買することができます。
つまり、アイテム等に市場価値がつくことになります。
ユーザーは、自分が課金した金額よりも市場価値が高いアイテム等を取得することができるかもしれない一方、自分が課金した金額よりも市場価値が低いアイテム等を取得するかもしれません。以上を前提に、NFTのガチャを実施する場合の賭博罪の該当性について検討すると、以下のとおりです。
①偶然の勝敗により
ガチャは性質上、ランダムのくじであるので「偶然の勝敗により」といえるため、①を満たします。
②財産上の利益
NFTはNFTプラットフォームで流通できるため、財産上の利益といえます。
③得喪を争う
ユーザーは、自分が課金した金額よりも市場価値が高いアイテム等を取得することができるかもしれない一方、自分が課金した金額よりも市場価値が低いアイテム等を取得するかもしれず、得をするか、損をするか、不明です。
このため、運営事業者と、財産上の利益の得喪を争う関係にあります。④ 失われ得る財産上の利益が一時の娯楽に供するものでないこと
一時の娯楽とは、直ぐに消費されるようなもので、財産的価値が低いものが一般に想定されています。
流通性のあるNFTが該当するものではないため、「一時の娯楽に供するものではない」といえます。以上から、NFTのアイテム等をガチャの方式で提供する行為は、賭博罪に該当する可能性が高いといえます。
サービスの運営では十分に留意して設計することが必要といえます。