ベンチャー企業の資本政策はどのような点に注意するべきでしょうか。
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資本政策とは、
会社が将来適切な株主構成になることを意図して、どのようなタイミングで、資金調達やインセンティブプランを実施するかを計画することを言います。一般的には、エクセルファイルの縦軸に株主構成を、横軸に時間を置いて作成します。例えば、2019年春にファウンダー3名で合計900万円の資本金の会社を設立し、同年秋にエンジェルに普通株を割り当てて3000万円を調達し、2020年の始めにVCに対してA種優先株を割当てて2億円調達する。A種の発行に併せて役員と従業員にストックオプションを発行する。その結果、ファウンダーの保有株は65%、エンジェルが10%、VCが20%、従業員のSOが5%となる、その後もう一度VCラウンドを行ってから2022年に株式公開(IPO)をするといった計画を作ることです。株式公開では、創業者が持株の一部と、ベンチャーキャピタルなどの持株を一般の市場で売り出すととともに、第三者割当増資で、市場から新しく資金調達をしてこれを新たな事業資金に充てます。
このとき、増資後の将来の指標EPS(1株当たりの利益)、PER(株価÷1株当たりの利益)などもザックリと決めておきます。ベンチャー企業では、最初からこういうものを作るわけですが、まさに絵に描いた餅です。これが、できるだけ上にぶれるように頑張っていきます。もちろん、会社は夫々異なるので個々の会社によって最適解は異なります。資本政策実施のポイント
では、どういう要素を考えて資本政策を作れば良いでしょうか。
まず、一番重要なことは、資本政策は事業計画の一貫であって、最初に事業計画がなければいけないということです。ビジネスが重要であって、きちんと利益が出て、世の中から評価され、貢献して付加価値を与えていることが大事です。その事業計画を支えるための資本政策になります。
ただし、いろいろ絡んでくると、あちらを立てればこちらが立たずというようなことがあるように、エクセルの資本計画の表をどんどん変えていくと、事業計画とだいぶ乖離してくる場合があります。このようなときは、そもそも事業計画に無理があったのだと思います。本末転倒にならないようにすべきです。増資したり、ストックオプションを発行したときは会社外部の人にも資本の状況がわかるように法務局で登記をします。これは、増資のやり方がまずかったと思っても、さかのぼってやり直すことはできないことを意味します。
また、第三者割当増資(いわゆるエクイティ)以外にも、さまざまな制度があります。政府系融資、補助金、助成金など、ベンチャーで使えるものはいろいろありますし、エンジェル税制などもあります。そういったものを活用して、求める結果が出るようにすることが大事です。
資金需要と会社支配比率のバランス
社長の持株が少ないと、社長にとっては、時価総額を上げるために頑張っていることが、自分の会社のためなのか人のためなのか分からなくなり、モチベーションが下がることがあります。そうならないために、ある程度のシェア確保は目指すべきだと思います。ただし、バイオベンチャーのように、開発のために300億円、500億円というお金がかかる会社で、いくら社長がお金を最初に持っていたとしても、なかなか2桁のシェアを持つことは難しいと思います。ただし、1000億円になってしまえば、7パーセント持っていると70億円ですので、時価総額が140億円の会社で51パーセント持っているのとあまり変わらないわけですから比率が低いこと=悪い話ではないのです。
株式上場時の1株当たりの株価の利益(EPS)や、株価収益率(PER)などは、たいていの場合、類似業種(ないし類似会社)を参考にしています。また、ベンチャーキャピタルがどれぐらい保有するかとか、潜在株(ストックオプション)をどれぐらい出すかということも考えなければいけません。
ベンチャーキャピタルは、株を売ってキャピタルゲインを得るために投資をします。ストックオプションも、権利行使をすると既存株主のシェアは下がり、希薄化します。いずれも、売り圧力が強ければ株価は下がります。1株当たりの価値が希薄化すれば株価が下がる原因になります。
また、ファウンダーの持株比率が低くなる会社では、提携関係にある事業会社などによる安定株主対策なども株主総会の定足数確保のために検討して良い選択肢だと思います。
株主総会で過半数の指示を得なければ役員として選任されることが出来ません。また、合併や定款変更などは株主総会の特別決議(2/3以上の賛成)が必要です。このような会社法のルールも株主構成を考えるにあたっては検討するべきポイントとなります。2019. Jan.