当社の従業員が行った発明について特許を取得しようと思っていたところ、その従業員が退職して別の会社に転職し、その会社が先に特許を取得してしまいました。当社はもう特許を取得できないのでしょうか。 なお当社には、職務発明について、発明時に特許を受ける権利を会社が承継する旨の定め及び退職者が職務上の秘密を第三者に漏らすことを禁止する旨の定めはあります。
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別会社が、御社の職務発明であることを知って横取りした場合には、特許を取り戻すことができる場合があります。 会社が職務発明に関する権利を承継する旨の定めのとおり、特許を受ける権利は、本来御社にあります。しかし御社が特許出願をしないうちに、第三者が発明者から特許を受ける権利を譲り受けて特許出願をすると、その第三者が先に特許を取得してしまい、反対に御社は特許を取得できなくなってしまいます。
もっともこの場合、特許を取得した第三者は、従業員が勤めていた会社が職務発明に関する権利を承継していること、その発明に関する情報を漏らすことが前の会社との間の秘密保持義務違反にあたることを知っている場合が多いでしょう。そのことを知りながらあえて先に特許を取得することは、特許の横取りといえ、許されるものではありません。過去の裁判例でも、「他社が出願によって対抗要件を具備しないという選択をしたことに付け込んだ不法性の高い行為であって,技術情報に関する競争秩序に対する脅威」であり、そのような出願をした者は「背信的悪意者」にあたると述べています。
そのような者が取得した特許は、審判によって無効とすることができます。御社は、特許を取得した会社に対して特許無効審判を提起し、取得された特許を無効にしたうえで、自ら特許を取得することができます。 また逆に、発明者を受け入れる会社の立場からすれば、その発明者が持ち込んだ情報が転職前の会社の秘密情報にあたり、その利用が知的財産権の侵害にあたらないかをよく確認する必要があるということになります。
〈参考〉
知財高判平成22年2月24日-バリ取りホルダー事件