当社の取引先は民事再生を申し立てました。当社はこの取引先に売掛債権を有しており、当該債権は取引先の不動産に設定された抵当権により担保されています。ただ、当社の売掛債権の総額は当該担保評価額を超えているため、不足額については別に権利行使したいと思っているのですが、可能でしょうか。
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民事再生手続開始の時において、再生債務者の財産について存在する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法・会社法上の留置権)を有する債権者は、別除権者として、再生手続によらないでその債権を行使することができます(民事再生法53条)。
もっとも、別除権を行使しても弁済を受けることができない債権の部分(不足額)が生じることがあり、その場合、不足額についてのみ再生債権者として権利行使することができます。
別除権者は別除権として債権届出をして(法94条2項)、予定不足額について議決権を行使でき、その後不足額が確定した場合に限って、再生計画に基づいて弁済を受けることができます。
別除権の届出
別除権者は、その被担保債権である再生債権の内容および原因、議決権額の他、その目的である財産および予定不足額について届け出ることで再生手続に参加することができます。
予定不足額の確定
1 担保権の消滅
担保権が消滅したときとは、具体的には、①担保権の実行が完了したとき、②裁判所の許可又は監督委員の同意を得て担保権の目的財産を受け戻したとき、③担保権を放棄したとき、などがこれに当たります。
2 同意による確定
別除権者と再生債務者は、別除権の不行使と担保目的物の評価の範囲内の債権額の弁済を主な要素とする協定(別除権協定)を結ぶことができます。法88条ただし書は、この別除権協定により予定不足額を確定させる余地を認めた規定になります。
別除権協定に定めるべき事項について法は規定していませんが、①担保目的物の評価額、②別除権者に対する弁済額と支払方法(分割払いになることが多いです)、③支払終了時における担保権陶器の抹消、④別除権の実行禁止、などが主な条項になります。
別除権協定は裁判所の許可事項又は監督命令における監督委員の同意事項とされています(法54条2項、41条1項6号、9号)。ただし、再生計画認可後の別除権協定は、同意事項とされていない取扱いが多いようです。
別除権協定によって、担保権を消滅させることなく被担保債権額の減額という効果が生じることになります。よって、登記・登録のある担保権については、被担保債権の範囲と額の変更について登記・登録をしておくべきことになります(この登記・登録の効果については、不足額確定の効力発生要件であるという考え方と、対抗要件に過ぎないという考え方があります)。
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