インターネット上に私を誹謗中傷する書込みを見つけました。誰に対してどのような責任を追及できますか。
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誹謗中傷する書込みを行った者に対する不法行為に基づく損害賠償請求や書込みの削除請求,名誉棄損罪での告訴などが可能です。また,サイト管理者やプロバイダに対する損害賠償請求も考えられます。
解説
インターネット上に誹謗中傷する書込みがなされ,これが人の社会的評価を低下させる表現に該当する場合,民事上は不法行為(名誉棄損)(民法709条),刑事上は名誉棄損罪(刑法230条1項)が成立する可能性があります。
このため,当該書込みを行った者に対し,不法行為に基づく損害賠償請求を行ったり,名誉棄損罪での告訴をすることが可能です。
ただし,名誉棄損罪については,①名誉棄損行為が公共の利害に関する事実に係り,②その目的が専ら公益を図ることにあり,③摘示した事実が真実であることを行為者が証明できれば,名誉棄損罪は成立しません(刑法230条の2第1項)。また,仮に事実が真実であることを証明できない場合でも,行為者が事実を真実と誤信し,誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らし相当の理由があるときは,犯罪の故意がなく,名誉毀損の罪は成立しないとされています(最高裁昭和44年6月25日判決)。
また,この刑事上の考え方は民事上も援用され,名誉毀損行為が,公共の利害に関する事実に係り,もっぱら公益を図る目的に出た場合,①摘示された事実が真実であることが証明された場合は違法性がなく,②もし事実が真実であることが証明されなくても,行為者において事実を真実と信ずるについて相当の理由がある場合は故意・過失がなく,どちらの場合も不法行為は成立しないとされています(最高裁昭和41年6月23日判決)。
なお,誹謗中傷的な書込みがインターネット上に掲載されたままの状態だと名誉を毀損されるという被害が継続することになりますので,民法723条や名誉権(人格権)に基づく差止請求として,当該書込みの削除を請求することも検討すべきでしょう。
次に,サイト管理者やプロバイダに対する請求についてですが,以下の要件を満たさない場合,サイト管理者やプロバイダは損害賠償責任を負いません(プロバイダ責任制限法3条1項)。
①権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信の防止措置を講ずることが技術的に可能であること
②当該特定電気通信(※)による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたか,当該特定電気通信による情報の流通を知っており,かつ,当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認める相当の理由があるとき
※ 特定電気通信:不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信(プロバイダ責任制限法2条1号)
このため,サイト管理者やプロバイダに対して損害賠償請求を行う場合,被害者の側で,一般的な要件に加えて,プロバイダ責任制限法3条1項によって免責されないことも主張立証する必要があります。