電子帳簿保存法が改正されたと聞きました。注文書や契約書などの電子取引の情報を電子データのまま保存したいのですが、どのように保存したら良いですか。
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1 はじめに
いわゆる電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律。以下、「法」といいます)は、「電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。」と定めています(法第10条本文)。
上記法第10条の財務省令とは、電子帳簿保存法規則(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則。以下、「本件施行規則」といいます)をいいます。今回、本件施行規則が改正され、令和2年10月1日に施行されたことから、電子取引の情報を電子データのまま保存する手段がより広く認められることとなりました。
本記事では、電子取引の情報を電子データのまま保存する手段について、具体例を示しながら解説します。
2 電子取引とは
法は、電子取引を下記のように定義しています。
法第二条(定義)
六 電子取引 取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。
上記「電磁的方式」とは、電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によっては認識することができない方式をいうため(法第2条第3号)、電子取引とは、一般的には、インターネットやファックスを用いて行われる取引をいうと考えられます。
3 電子データのまま保存する手段
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法的根拠
法第10条の「財務省令」、すなわち、本件施行規則は、電子データのまま保存する手段として、下記のとおり定めています。
(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第八条 法第十条に規定する保存義務者は、電子取引を行った場合には、次項又は第三項に定めるところにより同条ただし書の書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合を除き、当該電子取引の取引情報(法第二条第六号に規定する取引情報をいう。)に係る電磁的記録を、当該取引情報の受領が書面により行われたとした場合又は当該取引情報の送付が書面により行われその写しが作成されたとした場合に、国税に関する法律の規定により、当該書面を保存すべきこととなる場所に、当該書面を保存すべきこととなる期間、次に掲げる措置のいずれかを行い、第三条第一項第四号並びに同条第五項第七号において準用する同条第一項第三号(同号イに係る部分に限る。)及び第五号に掲げる要件に従って保存しなければならない。
一 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
二 当該取引情報の授受後遅滞なく、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、当該電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
三 次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うこと。
イ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
ロ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
四 当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。
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改正点
令和2年10月1日から改正された点は、電子データのまま保存する手段が従来は2つであったところ、それが4つまで増えたことです。
改正前までは、①取引情報の授受後すぐにタイムスタンプを付する方法(本件施行規則第8条第2号に相当)と、②電磁的記録の記録事項についての事務処理規程を定める方法(本件施行規則第8条第4号に相当)の2つが認められていました。
改正後は、改正前の①、②に加え、③電磁的記録の記載事項にタイムスタンプが付された後に、取引情報の授受を行う方法(本件施行規則第8条第1号)と、④条件を満たすコンピューターシステムで取引情報を扱う方法(本件施行規則第8条第3号)が認められるようになりました。
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具体的な方法
以下では、本件規則で定められている各方法に対応する具体的な手段をご提案します。
ア 本件施行規則第8条第1号
例えば、発注者が注文書や契約書にタイムスタンプを付した上で、これを受注者側に送信することが考えられます。
なお、ここでいうタイムスタンプとは、下記のようなものと定義されています(本件施行規則第3条第5項ロ)。
当該国税関係書類をスキャナで読み取る際に(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合にあっては、その作成又は受領後その者が署名した当該国税関係書類について特に速やかに)、一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ(次に掲げる要件を満たすものに限る。(略))
(1) 当該記録事項が変更されていないことについて、当該国税関係書類の保存期間(国税に関する法律の規定により国税関係書類の保存をしなければならないこととされている期間をいう。)を通じ、当該業務を行う者に対して確認する方法その他の方法により確認することができること。
(2) 課税期間(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第九号(定義)に規定する課税期間をいう。)中の任意の期間を指定し、当該期間内に付したタイムスタンプについて、一括して検証することができること。
イ 本件施行規則第8条第2号
取引情報を受けた後すぐにタイムスタンプを付すとともに、そのデータの保存者又はその保存者の監督者に関する情報を確認することができるようにする運用の下で電子データを管理することが考えられます。
ウ 本件施行規則第8条第3号
電子データの取引事項が訂正又は削除されたことの履歴を確認できるか、当該事項の訂正又は削除ができないコンピューターシステムで電子データを管理することが考えられます。
エ 本件施行規則第8条第4号
電磁的記録の記録事項についての事務処理規程を定めることが考えられます。
国税庁のホームページには、必要となる事項を定めた規程としては「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」が掲載されています。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/02.htm#a019
同規程を参考にしつつ、自社において、どこまで整備すればデータ改ざん等の不正を防ぐことができるのかについて、事業規模等を踏まえて個々に検討されるとよいでしょう。
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