当社が売掛債権を有している個人が小規模個人再生手続に入りました。小規模個人再生手続は通常の民事再生手続とどのように異なるのでしょうか。
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小規模個人再生は、民事再生の特側手続として、下記の要件を満たす場合に認められます。
まず、通常の民事再生手続の開始要件として、
- 債務者に破産の原因たる事実の生ずるおそれがあるか、又は債務者が個人事業者の場合には、当該事業の継続に著しい支障を来たすことなく弁済期にある債務を弁済することができないこと
- 再生手続開始の申立棄却事由がないこと、加えて、小規模個人再生特有の要件として、債務者が個人であること
- 債務者が継続的にまたは反復して収入を得る見込みがある者であること
- 無担保の再生債権の総額が5000万円を超えていないこと
- 債務者が小規模個人再生を行うことを求める旨の申述をしたこと
- 債務者が債権者一覧表を提出すること
を満たす必要があります。
この手続の特徴は,書面投票(民事再生法230条3項)によって行われる再生計画案の決議要件(下記1)と,認可基準(下記2)にあります。
1.決議要件
再生計画案に同意しない旨の回答をした議決権者が,議決権総数の半数に満たず,かつ,その議決権の額が議決権者の議決権の総額の2分の1を超えないときに,再生計画案の可決があったものとみなされます(同6項)
2.認可基準「基準債権」
認可基準(「基準債権」とは,別除権行使により弁済が見込まれる額等を除く無意義債権及び評価済債権をいいます。)
基準債権の総額 計画弁済総額の最低基準額 1500万円以上 300万円 500万円以上1500万円未満 基準債権の総額の5分の1 100万円以上500万円未満 100万円 100万円未満 基準債権の総額 給与所得者等再生
給与所得者等再生とは,小規模個人再生のうち,給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者で,かつその額の変動の幅が小さいと見込まれる場合に認められる制度です。
給与所得者等再生の場合は,再生計画案に対する書面投票も不要で,裁判所が届出再生債権者の意見を聞いたうえで,所定の事項に該当しない限り認可されます。
しかし,小規模個人再生計画における認可要件の他に,計画弁済総額が,再生債務者の収入から所得税額等を控除した額を1年間当たりの額に換算した額から1年分の費用を控除した額に2を乗じた額以上でないと認可されません。
住宅資金貸付債権の特則
住宅資金貸付債権の特則とは,住宅ローンのある再生債務者が,再生計画において「住宅資金貸付債権の特則」を定めることによって,(ローン債権者との交渉に基づいて)住宅ローンの元本や利息等の支払内容を新たに定めるものです。
なおこの制度は,ローン支払額をカットするものではありません。また,住宅資金貸付債権者に代位弁済した者に対しては適用がなく,保証会社が保証債務を履行した場合は,その6カ月を経過する前に民事再生手続開始の申立てをしたときに限り適用されます。
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