当社の取引先が民事再生を申し立て、再生手続開始決定がありました。この取引先は海外に財産を有していることが分かっているのですが、再生債権者である当社は、この取引先が海外に保有する財産から弁済を受けることができるのでしょうか。

平成12年以降の倒産諸法制の改正に基づいて、日本の民事再生手続の効力は外国にも及ぶことになりました。従って、再生債権者は、民事再生手続開始決定後に再生債務者の外国財産から弁済を受けることはできないことになりそうです。しかし、その財産の所在地国が日本の倒産手続の効力を承認するとは限らず、また、現実問題として外国財産からの弁済受領を阻止することは容易ではありません。そこで、民事再生法では、債権者が外国財産から弁済を受けることを認めつつ、もし受けた場合には配当の際に調整し、債権者間の公平を図ることにしています(法89条)。

法89条は、外国財産からの弁済を受けた再生債権者も弁済を受ける前の再生債権全額について再生手続に参加できるとしたうえで、他の再生債権者が外国財産から受けた弁済と同一割合の弁済を受けるまでは、再生計画に基づく弁済を受けることができないと規定しています。

例えば、債権額が1000万円で、外国財産からの弁済額が150万円、再生計画における弁済率が30%と想定される場合、当該再生債権者は、外国財産からの弁済がなかった場合の弁済額300万円と実際に受けた外国財産からの弁済額150万円の差額の150万円についてのみ、他の債権者と平等に、再生計画に基づいて弁済を受けうるということになります。

なお、民事再生法規則28条では、再生債権者が外国で弁済を受けた場合には、速やかに、再生債務者等に対し、その旨及び当該弁済の内容を通知しなければならないと規定されています。

 ※  外国で受けた弁済額の把握

再生債務者等は、上記の民事再生法規則28条に基づく再生債権者の自発的申告だけを頼りにできませんので、外国で平行倒産手続が係属している場合には、当該手続の管財人に対し情報提供等の協力を依頼したりして情報の入手に努める必要があります。外国での倒産手続が係属していない場合には、自ら外国倒産手続を申し立てることも考えられます。

 

Category:外国財産からの弁済 , 民事再生

企業向け顧問弁護士サービス
企業を対象とした安心の月額固定費用のサービスを行っています。法務担当を雇うより顧問弁護士に依頼した方がリーズナブルになります。