民事再生手続においては,再生債務者の財産の価額評定はどういった基準で行われ,再生債権者にとってどのような意義をもつのでしょうか。
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解説
民事再生法では,再生債務者は再生手続開始後遅滞なく,再生債務者に属するいっさいの財産について再生手続開始の時における価額を評定しなければならないと定めています(124条1項)。そして,財産評定は,原則として処分価額を評価基準として(処分価値基準)行われ,例外的に,「必要がある場合」には,これに併せて「事業を継続するものとして」(事業継続価値基準)評定を行うことができます。(民事再生規則56条1項)。
ここで「処分価額」とは,強制競売の方法により即時に債務者の協力を前提としないで処分できる価額=破産を前提とした清算価値,を意味します。これは,同じく再建型の手続である会社更生手続では時価が評価基準となっていること大きく異なります。
評定の基準時は,再生手続開始決定時とされ,再生債権が原則として再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であること(法84条)に対応するものになっています。
評定の対象は,開始時点における「再生債務者に属する一切の財産」であり,担保の目的物や簿外資産を含みます。具体的には,売掛金,受取手形,未収金などの債権については,権利の実質(回収可能性)を勘案しつつ評価減を行うことになります。次に,再生債権者にとっての意義ということでは,再生債務者の財産評定は,再生計画による弁済率が他の手続(破産)によるよりも有利か,事業の継続方法次第ではさらに有利な弁済を受けられる可能性があるかを判断するための資料を提供するものと言えます。
すなわち,民事再生手続において,債務者による再生計画の策定は,破産に代わる集団的和解の提案ともいえるものです。再生債権者からすると,その計画の是非についての議決権を行使するに当たって,それによる弁済額が破産による配当を上回るものであるか点検する必要があります。そこで,再生計画案の根拠となる財産評定は,かかる点検を可能にする判断資料の提供という側面を持つことになります。
逆に言えば,上記,財産評定の評価基準が原則として処分価額になっている理由の一つは,その基準によって再生計画案による弁済と(破産による)清算価値との比較が可能となるからなのです。
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