当社の取引先は、代表取締役の不正な取引により被った多大な損失が原因で、民事再生手続に入りました。再生債権者である当社は、この代表取締役に対して責任を追及することができるでしょうか。
-
民事再生法は、簡易迅速な決定手続きによる役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定手続きを認めています(法143条)。従って、貴社は、①管財人が選任されていない場合には、取引先の代表取締役に対する損害賠償請求権の査定を直接裁判所に申し立てることができます。②管財人が選任されている場合には、査定の申立権者は管財人となりますので、管財人に対して、査定の申立てを促すことが出来ます。
解説
(1) 査定の申立権者及びその相手方
再生債権者に上記査定手続の申立権が認められるのは、再生債務者に管財人が選任されていない場合のみになります。但し、相手方となる役員の違法行為について証拠等を把握している場合、それらを管財人に提示し、管財人に査定の申立てを促すことは出来ます。
相手方は、「理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者」であり(法142条1項)、申立時に既に退任している役員もこれに含まれると判断された例も存在します。(2) 申立理由
査定の申立書には、申立ての趣旨および申立ての理由を記載する必要があります。申立ての理由には、損害賠償請求権の原因となる事実を具体的に記載します(民再規則69条1項2号)。再生債務者が株式会社であれば、役員等の会社に対する損害賠償責任(会社法423条、486条)などが申立ての理由として考えられます。(3) 審理手続き
裁判所は、査定の裁判をするに当たって、当該損害賠償請求の相手方となった役員を審尋しなければなりません。東京地裁の運用では、申立てから2週間程度先に審尋期日が指定されます。(4) 異議の訴え
損害賠償請求権の査定の裁判に対して不服のある者は、その送達を受けた日から1ヵ月内に、再生裁判所に異議の訴えを提起することが出来ます(法145条1項、2項)。これに対し、申立てが棄却された場合には、異議の訴えの対象にはなりません。
このQ&Aを見た人におすすめ