取引先が民事再生手続を申し立てました。会社再建のために引き続き取引をして欲しいと言われていますが、民事再生手続中であっても、通常どおり支払いを受けることができるのでしょうか。

①民事再生手続開始「後」に生じた、売掛金や貸付などの再生債務者への債権や、②民事再生の申立てから再生手続開始決定までの期間であっても、再生債務者の事業の継続に欠くことができない債務を負担する場合(但し、裁判所の許可が必要です。)

③再生債務者が履行を選択した双方未履行の双務契約上の債権などは、共益債権として、民事再生手続によらないで約定どおり弁済を受けることができます。

解説

民事再生手続開示までに取得した再生債務者に対する債権は、原則として、再生債権として再生計画に従った弁済をしなければなりません(法84条1項)。

このため、民事再生の申立てがされたと分かった後は、再生手続開始決定が出る前に再生債務者と取引をする者はいなくなってしまいます。民事再生の申立てから再生手続開始決定が出るまでの期間が、通例1週間でことを考えると、債務者の事業の継続に支障を来すことになります。

そこで、民事再生法は、上記の期間内に「資金の借入れ、原材料の購入その他再生債務者の事業の継続に欠くことができない行為をする場合には、裁判所は、その行為によって生ずべき相手方の請求権を共益債権とする旨の許可をすることができる。」(法120条1項)と定めています。また、「監督委員」も、裁判所からその権限を付与された場合、この許可に代わる承認をすることができます(法120条2項)。

民事再生法はまた、再生手続開始決定時に締結済みの双務契約で、双方未履行の状態にあるものについて、再生債務者に①契約を解除するか、または、②自己の債務を履行して相手の債務の履行を請求するか、の選択権を与えています(法49条1項)。

双方未履行の状態にある双務契約とは、例えば売買契約などで、再生債務者は代金を支払っておらず、かつ、相手方も納品をしていないようなケースを言います。

この場合に、再生債務者が相手方の債務の履行の請求を選択したときは、相手方が有する請求権は共益債権として、民事再生手続によらないで随時弁済をうけることができます。

※ なお、この他にも、再生計画に基づく債権カットの対象にならず、共益債権に類似するものとして、租税債権、社会保険料及び労働債権などが民事再生法上規定されています(法122条1項、2項)。

Category:共益債権 , 民事再生

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