当社は、取引先が民事再生手続の申し立てをする直前に、同取引先が有していた売掛債権を譲り受けました。その後、監督委員から、当該売掛債権の譲り受けを否認するという手紙が届きました。当社としては、どうするべきでしょうか。

貴社が、その売掛債権を譲り受けた当時、手形不渡などの支払の停止があったことや、他の債権者を害することを知らなかったことを証明すれば、否認権を争うことができます。

解説

否認権は、債務者が「支払の停止等」(民事再生法127条1項2号)があった後に行った、特定の債権者を利する抜け駆け的な行為の効力を否定する(無効にする)制度です。否認権が認められたとすると、貴社は最初から債権を譲り受けなかったことになり、貴社の再生債務者に対する債権も復活します。

ただし、倒産直前に代物弁済を受けた場合でも、「これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び再生債権者を害する事実を知らなかったときは、」否認されません(同127条1項2号但書)。

「支払の停止等」に該当する行為は、手形の不渡りが代表的なものですが、書面や口頭での支払の拒絶、店舗であれば閉店の張り紙などもこれに当たり得ます。「再生債権者を害する事実を知らなかったとき」とは、債務者の弁済能力が低下したために、貴社が債権を譲り受けることによって、他の債権者が満足を得られなくなることです。

貴社が、これらの事実を知らなかったことを証明すれば、否認を争うことができます。

監督委員の否認権行使が認められる場合であっても、話し合いによって、債権譲渡の効力は維持したまま、譲渡債権の額の一部を監督委員へ返す形で決着させることも考えられます。

Category:否認権 , 民事再生

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