当社は、製造を請け負う会社です。「偽装請負」が問題となると聞きましたが、そもそも偽装請負とは何でしょうか。当社としては、偽装請負とならないためにどうすればよいでしょうか。もし偽装請負にあたるとどのような問題があるのでしょうか。
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- 偽装請負とは、形式的には請負であっても、実質的には違法な労働者派遣や労働者供給にあたるものをいいます。
- 偽装請負とならないためには、御社が御社の労働者を指揮命令する体制を整えるべきです。
- 偽装請負にあたると、刑事罰、行政監督、労働契約関係への影響を受けることがあります。
偽装請負とは
「偽装請負」とは、形式的には「請負(業務委託も含む)契約」と「請負人とその労働者との間の労働契約」となっているが、実質的には、「労働者派遣」や「労働者供給」となっているもので、法律の定める要件をみたさないものをいいます。以下のように整理できます。
請負(業務委託)(民法632条、656条)労働者派遣(労働者派遣法2条1号)労働者供給(職業安定法4条6項)偽装請負チェックポイント
結局、「偽装請負」にあたるかの判断にあたっては、注文主(委託者)と労働者との間に実質的指揮命令関係があるか(請負業者(受託者)が指揮命令権を有するか)が重要です。 これに関しては、規則(職業安定法施行規則4条)及び厚生労働省の告示(参考1)があります。チェックポイントは以下の通りですので、請負事業者は、これらの体制を整えましょう。厚生労働省の疑義応答集(参考2)も参考になります。
- 労働力の直接利用
以下の①~⑥の指示その他の管理を自ら行うこと- 業務遂行に関するもの
- ①業務遂行の方法
- ②業務遂行に関する評価等
- 労働時間等に関するもの
- ③始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等
- ④労働時間を延長する場合又は休日に労働させる場合
- 企業における秩序維持、確保等のためのもの
- ⑤労働者の服務上の規律に関する事項
- ⑥労働者の配置等の決定及び変更
- 業務遂行に関するもの
- 業務処理の独立性
- 業務処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること
- 業務処理について、法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと
- 以下のいずれかの業務処理に該当すること(単なる肉体労働を除く)
- ①自己の責任と負担で準備、調達する機械・設備・器材または材料・資材によるもの
- ②自ら行う企画または自己の有する専門的な技術・経験に基づくもの
効果
- 刑事罰
違法な「労働者派遣」にあたる場合は請負事業主が、違法な「労働者供給」にあたる場合は請負事業主と注文主が、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられることがあります(労働者派遣法59条、職業安定法64条9号)。
- 行政監督
違法な「労働者派遣」にあたる場合、請負事業主と注文主は行政監督を受けることがあります(労働者派遣法48条以下)。
- 労働契約関係
違法な「労働者派遣」にあたる場合、請負(業務委託)契約や雇用契約は無効となるか、注文主と労働者との間で黙示の雇用契約が成立するか等が争われた事件があります。
ある裁判例(参考3)は、業務委託契約および雇用契約は公序良俗違反として無効であり(民法90条)、業務委託者と労働者との間で黙示の労働契約が成立すると判断しました。
しかし、ある判例(参考4)は、違法な労働者派遣であっても、直ちに業務委託契約および雇用契約は無効となるものではなく、黙示の雇用契約も認められないと判断しました。
結局、労働契約関係は具体的事情に基づいて判断することとなります。
参考
- 「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(厚生労働省HP)
- 疑義応答集(厚生労働省HP)
- 松下プラズマディスプレイ事件高裁判決(大阪高裁平成20年5月26日判決)
- 同事件最高裁判決(最高裁平成21年12月18日判決)
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