- 当社では、有期契約社員の更新をしない予定でしたが、「雇止め」で無効となる可能性が高いようです。その後の対応として何かよい方法はないでしょうか。
合意によって退職してもらったり、今後更新しないことを了解してもらったりする方法が考えられます。
解説
有期契約社員の更新をしないことが「雇止め」で無効となる場合(労働契約法19条)でも、使用者と有期契約社員との合意によって、退職することや、今後更新しないようにすることは、法律上問題ありません。
しかし、実際上、後になって有期契約社員から「むりやり合意させられた」と争われることは少なくありません。紛争予防のために、以下のような措置を講ずるとよいでしょう。合意退職の場合
- 退職にメリットを見出すことができるような条件を提示すること
例えば、以下のようなものがあります。
・ 労働条件が同等かそれ以上の転職先を紹介する
・ 退職金を支給する - 合意形成の手続・過程を合理的なものにすること
例えば、以下のような手続・過程を経ることが考えられます。
・ 更新期間よりかなり早い段階(※)から退職を検討してもらうよう勧める
※ 厚生労働省の基準(参考1)によれば、3回以上更新があるか、1年以上継続雇用
されている場合、30日前までに雇止めの予告を行うよう義務付けていることが
参考になります。
・ 持ち帰って検討することを認め、何度か話し合いの場を設ける
・ 合意退職しなければ「雇止め」されると誤信させないような対応をする
※ 裁判例(参考2)では、自主退職しなければ懲戒解雇になると誤信してなされた
退職の意思表示が、錯誤により無効となったものがあります。 - これらの内容を記録化すること
以上の手続きを行っていたとしても、後日争う余地を残してしまっては紛争予防として
不十分です。書面(面談記録)やメール等により、客観的記録として残しておくべきです。
不更新合意の場合
厚生労働省の通達(参考3)によれば、更新年数や更新回数の上限などを使用者が一方的に宣言
したとしても、ただちに更新の合理的期待が否定されることにはならないとされています。
次の更新の際に「雇止め」として無効となるリスクを抑えるためにも、合意を得ることが望まし
いです。
合意退職で解説した点に加え、以下の点に注意してください。
・ 今後更新しないことの意味を十分説明し、理解してもらう
※ 認めないと直ちに打ち切られるのではないかと恐れ、それならば今後の不更新を認めた
ほうがよいとなりやすいため、任意性の判断は退職の場合に比べ微妙なものとなります
(参考4)。参考
- 「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」(厚生労働省HP)
- 東京地裁平成23年3月30日判決
- 「労働契約法の施行について」(厚生労働省HP)
- 横浜地裁平成25年4月25日判決
- 退職にメリットを見出すことができるような条件を提示すること
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