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アントレプレナーのためのマーケティング11ステップ / ピボット(事業転換)においてミスを犯さないために

ニュースレター(アーカイブ)

 今回も、グローバルに展開するスタートアップ・アクセラレータFounder Instituteが紹介する記事の中から、起業家の方またはこれから起業家を目指す方におすすめの情報を紹介します。

 Founder Institute(FI)は2009年にシリコンバレーで立ち上げられた、起業家のスタートアップ立ち上げを支援するグローバルなアクセラレータです。古田弁護士がディレクターを務めるFI東京チャプターは、今年8月に2015春セメスターの卒業式が行われました。その詳細については、古田弁護士のブログをご覧ください。

今回の紹介テーマ

  1. アントレプレナーのためのマーケティング11ステップマーケティングは、スタートアップの商品やサービスを広く知らしめるのに重要なものです。しかしマーケティングにはいくつもの方法があるため、どこから手を付ければよいのか、迷ってしまいます。今回は、FIヘルシンキのメンターでOffice Nomad社の創業者であるJanne Saarikko氏が説くアントレプレナーのためのマーケティング11ステップを紹介します。
  2. ピボット(事業転換)においてミスを犯さないために"リーン・スタートアップ"の考えが拡がりをみせる現在、多くの起業家は、自らのスタートアップをピボットし、アイデアが成功するかを試します。しかし、ことスタートアップ目的に関しては、ピボットは必ずしも良いものとなるとは限りません。
    今回は、FIのファウンダー兼CEOであるAdeo Ressi氏が解説する、ピボットをする際に注意すべき点につき紹介します。

1. アントレプレナーのためのマーケティング11ステップ

 マーケティングは、スタートアップの商品やサービスを広く知らしめるのに重要なものです。しかしマーケティングにはいくつもの方法があるため、どこから手を付ければよいのか迷ってしまいます。また大会社のマーケティングとは大きく異なり、スタートアップでは、マーケティングに割くお金やリソースがなく、社内ルールもありません。そしてマーケティングはコントロールが効かないものであり、かつ失敗が許されないものでもあります。このようなスタートアップ・マーケティングは、分析的かつ創造的に行う必要があるのです。

 今回は、FIヘルシンキのメンターでOffice Nomad社の創業者であるJanne Saarikko氏が説く、アントレプレナーのためのマーケティング11ステップを紹介します。

(1)ウェブサイトを持て

 まずウェブサイトを持つ必要があります。そもそも自社のウェブサイトの役割は何でしょうか?
自社がネット販売サービスを提供するのであれば、ウェブサイトはECサービス・プラットフォームの役割を果たさなければなりません。
 自社を宣伝したいだけであれば、もっと適した媒体がありますから、ウェブサイトには簡単な会社概要、事業概要、連絡先等だけ記載しておけば良いでしょう。ウェブサイト上でサービスを提供しないのであれば、WordPressで十分です。

(2)見つけられるようになれ

 Google検索では、検索結果の1ページ目か、最低でも2ページ目には載りましょう。そうでなければ、存在していないのと同じです。検索結果の上位に載るためには、会社や製品に関するコンテンツをたくさん掲載してください。Googleの次に大きな検索エンジンはYouTubeです。プロのプレゼンテーションを見られるSlideshareも人気のあるサイトです。Google+は検索結果を上げるのに効果があり、コミュニティ作りにも役立ちます。

 ただし、SEO対策業者には注意が必要です。売上げ1000%アップなどと宣伝してSEO対策を提案してきますが、それによって成功するのはごくごくわずかです。

(3)コンテンツを作りメディアになれ

 自社や業界に関するコンテンツ作りにリソースを割いてください。ウェブサイト上のブログだけでなく、LinkedIn、YouTube、Slideshareなどのソーシャル上にもアップしてください。うまくいくと、自社がメディアとなってコミュニティが生まれます。他社や業界の情報をまとめるアグリゲーターとなるのも悪くはないですが、やはり自社コンテンツを提供することが重要です。

(4)ソーシャルメディアで人気者になれ

 近年のマーケティングは、「伝達」ではなく「参加」がキーワードです。メジャーなSNS(Facebook、Twitter、LinkedIn、YouTubeなど)で積極的に発言して、ディスカッションに参加し、価値を産んで、人々を巻き込んでいきましょう。こういった努力はあとできちんと評価されます。

(5)オンライン上に常駐せよ

 オンライン上で、潜在顧客がいつでも連絡を取れるようにしておきましょう。問い合わせ連絡先を表示しておき、オンラインチャットも設けておきます。自分たちのことを知らない人がどうやって見つけるだろうか?その人たちがどうやってコンタクトを取るだろうか?このような問題意識を持っておくと良いでしょう。

(6)オフラインでもPRせよ

 多くのマーケティングはオンラインで行われるものの、オフラインでのPRも考えておきましょう。ただし、展示会にブース出展してもほとんどの場合は時間の金の無駄に終わります。良い方法は、イベントに、スピーカーやコントリビューターとして参加することです。また小規模のミートアップも、そのグループの中で注目を集められるという点では良いと思います。

 もし参加できるようなイベントがなければ、自分たちで主催すればよいのです。競合企業と手を組んで始めるのもよいでしょう。

(7)売上げをコントロールせよ

 Janne氏は、マーケティングで売上げをコントロールできると考えています。つまりマーケティングは販売プロセスの一環なのであって、マーケティングを分析して理解すれば、それを使って売上げを伸ばすことができるのです。マーケターの役割は深い分析に基づいて、あらゆるものを向上させ続けることだと思っています。

 よいマーケターは、常に顧客のニーズを満たすことを心がけています。プロダクトと顧客との間を往復しながら、少しでも改善すべき点はないかを探ります。そこにはルールも境界もなく、法に反しない限りは何をやってもよいのです。

(8)システマティックに、アジャイルに

 いまやろうとしていることを、きちんと計画に落とすことが大切です。例えば今後1ヶ月〜1ヶ月半の間に、向こう6〜9ヶ月のマーケティング計画の詳細を作成してください。

 またアジャイル(迅速・機敏)であることも必要です。マーケティング計画の中で、上手くいかない箇所があれば変更してください。なにより大切なことは、長期的目標に向かって進むということです。計画にこだわりすぎるのは禁物です。

(9)定量的に分析せよ

 すべてのものは、ある目的のために、特定の目標数値の達成を目指して行われるべきです。

 その「測り方」にも注意が必要です。マーケティングの目標設定は、近すぎても遠すぎても不適切です。

 例えば、イベントを主催した場合の目標設定はどのようにすべきでしょうか。おそらく「参加者数」では近すぎるでしょうし、「売上数」では遠すぎます。売上をアップさせるために主催したイベントであれば、「書面で覚書を交わした顧客数」や「書面で申込みがあった顧客数」などが適切だと思います。

(10)創造的に

 なんでも普通にやってはいけません。ひねりを入れましょう。そうしないと記憶に残りません。

 創造性を発揮するのは、顧客に届ける「価値」です。常に「顧客はこの製品に何を求めているのか?」「顧客はどこに惹かれているのか?」を問いかけましょう。

(11)トライ&エラー

 マーケティングの世界に、正解も不正解もありません。試してみて、上手くいかなかったら、そこから学べばいいのです。そのために分析をするのです。

 以上、Saarikko氏が説くアントレプレナーのためのマーケティング11ステップでした。マーケティング戦略を考える際に参考にされてはいかがでしょうか。

参考
Startup Marketing 101: An Entrepreneur's Guide
https://fi.co/posts/20401

2. ピボット(事業転換)においてミスを犯さないために

 ファウンダーは、限られた資源と時間の中で、すぐ顧客から学び、製品開発を繰り返すことで顧客が望む商品を作る必要があります。そのためのシンプルな方法論である"リーン・スタートアップ"は、ここ数年でスタートアップの世界を変えてきました。

 しかしながら、実際は、"リーン・スタートアップ"の考えが誤って教えられることがあります。Adeo氏によると、スタートアップのファウンダーの多くは、"リーン・スタートアップ"のキーワードの1つである"ピボット"を拙速に、急激に、または適切な確認なしに行ってしまっています。

 "リーン・スタートアップ"の提唱者であるEric Ries氏は「"ピボット"は、ビジョンを変えることではなく、戦略を変えることだ」と述べています。

 しかし不運にも、Adeo氏が世界中で見てきた多くのファウンダーの"リーン・スタートアップ"の方法は、この考えと明確に異なっているそうです。

 Adeo氏は、会社を設立したものの閉鎖または休眠させてしまったFI卒業生のファウンダー数人にインタビューしました。すると、これらのファウンダーに共通して確実に言えることは、以下のいずれかの理由で、開発する製品による問題解決に対する情熱が不足していたということです。

  • 初めから情熱を注げない問題の解決を追求していた
  • 問題を知る前にピボットしすぎたために、自社のオリジナルのビジョンにフィットしない製品を作っていた

 では、どのようにこの問題を解決すべきでしょうか?ファウンダーがどのように情熱と自社の強いビジョンを持っていることを保証できるでしょうか?さらに、ピボットするか否かを正確に判断するためのデータとフィードバックを、どのように適切に解釈することができるでしょうか?

 Adeo氏のFIでの経験によると、アーリーステージにある会社においては、ファウンダーが次の2つのことを確認するのがベストです。

  1. 自社にとって最もリスクの高い仮説を、適切にテストする
  2. 「なぜ会社を作ったのか?」との問いに対する最高の答えを持つ

 特に(2)は、「なぜ」会社を設立したのかについて良い理由を持っていないなら、良い「何か」(製品)は決して作れないでしょう。

 そして、その「なぜ」は、顧客の問題と、自分の強みや情熱とが交わる部分から形成される必要があります。もしこの「なぜ」に適切な答えが出せないのであれば、その後に当該ビジネスが成功する見込みは高くないでしょう。

 結局、ファウンダーは(1)(2)を確認する形で、顧客からのバランス・フィードバックを行う必要があります。

 ピボットは、会社のために自分のビジョンを変えることではありません。また、実際はピボットするより、ピボットしないで耐えることの方が多いでしょう。

 適切なピボットを行うことで、事業を停滞させずさらに加速していけるように、前記2つの意識を持つことを忘れず、事業を行っていってください。

参考
Don't Make This Mistake When Pivoting Your Startup http://fi.co/posts/19461

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