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Clair Lawfirm ニュースレター vol.24


 今回は,特許庁の特許・商標等に関する料金引下げのお知らせ,会社の行為の商行為性の主張立証責任について判断した裁判例の紹介,会社分割によるゴルフ場事業の承継と預託金返還義務の有無について判断した裁判例の紹介,相互リンク募集のお知らせをお送りします。


1 特許庁の特許・商標等に関する料金引下げのお知らせ

 平成20年4月18日の法改正により,平成20年6月1日から,特許等に関する料金が引下げられました。

2 判例紹介−最高裁平成20年2月22日判決

 会社の行為は商行為と推定され,これを争う者に当該行為が当該会社の事業のためにするものでないことの主張立証責任があると判断した裁判例をご紹介します。

3 判例紹介−最高裁平成20年6月10日判決

 会社分割によりゴルフ場事業を承継した会社が,会社分割前のゴルフクラブの名称を引き続き使用していた事案で,特段の事情のない限り承継会社に預託金返還義務があると判断した裁判例をご紹介します。

4 相互リンク募集のお知らせ

 WEBサイトのリニューアルに伴い,相互リンク先を募集しています。

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1 特許庁の特許・商標等に関する料金引下げのお知らせ

 平成20年4月18日の法改正により,平成20年6月1日から,特許等に関する料金が引下げられました。
 特許,意匠,商標の出願・審査・登録に関する改定後の料金は,以下のとおりです。
 商標登録したサービスマークは,自社が独占的に使用でき,無断使用する者に対して使用差し止め請求ができるため,自社の商品や役務と他者のそれとを明確に区別する有用な知的財産権です。また,商標登録をしないまま放置しておくと,後から同一の商標を取得され,その後の利用範囲が制限されるおそれもあります。
 今回の料金引下げを機に,商標登録をご検討されてはいかがでしょうか。(鈴木理晶)

【1】 特許関係料金

 (1)出願料
   15,000円

 (2)出願審査請求料

  ・昭和63年1月1日から平成16年3月31日までの出願
   84,300円+請求項数2,000円

  ・平成16年4月1日以降の出願
    168,000円+請求項数1,000円

 (3)特許料・登録料(昭和63年1月1日以降の出願で,平成16年4月
   1日以降に審査請求をした出願の場合)

  ・第1〜3年まで
                 毎年 2,300円+請求項数200円
  ・第4〜6年まで
                 毎年 7,100円+請求項数500円
  ・第7〜9年まで
                 毎年21,400円+請求項数1,700円
  ・第10年〜25年まで
                 毎年61,600円+請求項数4,800円
 
 ※特許については,個人,中小企業,大学研究者及び大学等を対象と
 した審査請求料と特許料(1年分から3年分,適用対象によって一部6
 年分まで)の減免・猶予の措置があります。

【2】 意匠関係料金

(1)出願料
   16,000円

(2)意匠登録料
       ・第1〜3年まで   毎年  8,500円
       ・第4〜10年まで  毎年 16,900円
       ・第11〜20年まで 毎年 33,800円

【3】 商標関係料金

(1)出願料
  3,400円+区分数8,600円
     (※改正前 6,000円+区分数15,000円)

(2)設定登録料

 ・全納(10年分)
     区分数37,600円
     (※改正前 区分数66,000円)

 ・分納(前期5年分・後期5年分)
     区分数21,900円

(3)更新登録料

 ・全納(10年分)
     区分数48,500円
     (※改正前 区分数151,000円)

 ・分納(前期5年分・後期5年分)
     区分数28,300円

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2  判例紹介−最高裁平成20年2月22日判決

 会社は様々な債権を有しています。会社の債権は,何年で時効にかかり,行使できなくなるのでしょうか。

 債権の消滅時効について,民法167条1項は「債権は,10年間行使しないときは,消滅する。」と規定し,債権の消滅時効を原則として10年としています。他方で,商法522条は「商行為によって生じた債権は,…5年間行使しないときは,時効によって消滅する。」と規定しています。このように,債権は,民法により原則として10年で時効になりますが,債権のなかでも「商行為によって生じた債権」については,例外的に5年という短期で時効にかかることになります。

 会社法5条は,会社が事業としてする行為は商行為であると定めているので,この行為によって生じた債権は,「商行為によって生じた債権」として5年の短期消滅時効にかかります。
 一般的に,自社製品の販売は会社が「事業とする行為」として「商行為」であり,これにより生じた売掛債権は「商行為によって生じた債権」であって,その消滅時効は5年です。ところが,会社がその社長の友人にお金を貸す行為については,金貸しを事業として行う会社でない以上,「事業としてする行為」とは言い難いように思います。そうなると,この貸付債権は,「商行為によって生じた債権」には該当せず,その消滅時効は10年になるのでしょうか。

 この点について,最高裁が新しい判断を示しています。
 すなわち,「会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負うと解するのが相当である。」と判示しています(最高裁平成20年2月22日判決)。

 この判例によれば,会社の行為は何であれ「商行為」と推定され,短期5年の消滅時効にかかります。この推定を覆し,10年の消滅時効を主張して争う場合には,その争う側が「当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であること」を主張立証しなければなりません。

 では,会社のどのような行為が「当該会社の事業と無関係である」として,商行為の推定を覆すことができるのでしょうか。
 上記判例は,貸付行為について,「情宜に基づいてされたものとみる余地があるとしても,それだけでは,1億円の本件貸付けが会社の事業と無関係であることの立証がされたということはできず」としています。会社は,砂の採取と販売を行う会社で,金銭の貸付けを事業として行っているのではなく,会社と社長の友人との間には,これまで取引は一度もありませんでした。そのような状況で,社長との友人関係に基づいて行われた友人への貸付行為が「事業とは無関係であるとは言えない」としているのです。

 どのような行為について「事業とは無関係である」と認定されるのかを上記判例は明らかにしていませんが,この判例を前提にする限り,商行為の推定(5年の短期消滅時効)を覆すのはほとんど不可能のようです。
 会社法務の観点からすれば,会社が有する債権は,その発生原因や名目を問わず全て5年の短期消滅時効にかかるという前提の下で,管理・保全していく必要があると思われます。(佐川)

  参考:最高裁平成20年2月22日判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080222162504.pdf
     民法167条1項,商法522条1項,会社法5条

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3 判例紹介−最高裁平成20年6月10日判決

 会社分割によりゴルフ場の事業を承継した会社が,会社分割前のゴルフクラブの名称を引き続き使用していた事案で,最高裁は,譲渡会社の商号を引き続き使用した譲受会社の責任等について定めた会社法22条1項を類推適用し,特段の事情のない限り承継会社に預託金返還義務があることを認めました。

 事案の概要は以下のとおりです。
 A社は,預託金会員制のゴルフクラブ(以下「本件クラブ」といいます。)があるゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」といいます。)を経営していました。平成7年,Xは,A社との間で,本件クラブの正会員となる旨の会員契約を締結し,会員資格保証金3,500万円を預託しました。
 平成15年1月,Y社は,A社の会社分割(以下「本件会社分割」といいます。)により本件ゴルフ場の事業を承継し,本件クラブの名称を引き続き使用することになりましたが,本件クラブの会員に対する預託金返還債務は承継せず,A社に残されることになりました。
 それから3ヶ月後の同年4月,A社とY社は,Xを含む本件クラブの会員に対し,「お願い書」と題する書面を送付しました。当該書面には,本件会社分割によりY社が本件ゴルフ場を経営する会社として設立されたことなどが記載されていました。
 その後,Xは,平成16年5月,Y社に対し,本件クラブから退会する旨の意思表示をするとともに,本件預託金の返還を求めましたが,Y社がこれに応じなかったため,本件訴訟を提起しました。

 最高裁は,預託金会員制のゴルフクラブの名称がゴルフ場の事業主体を表示するものとして用いられている場合に,当該ゴルフ場事業が譲渡され,譲渡会社が用いていたゴルフクラブの名称を譲受会社が引き続き使用しているときには,特段の事情がない限り,譲受会社は,会社法22条1項の類推適用により当該ゴルフクラブの会員が譲渡会社に交付した預託金の返還義務を負うとする最高裁平成16年2月20日判決を引用し,これは,会社分割に伴いゴルフ場事業が承継された場合にも妥当するとしました。

 そして,会員向けに送付された「お願い書」は,Y社が,A社の本件クラブの会員に対して負っていた義務を引き継がなかったことを明らかにしたものとはいえず,当該書面の送付をもって特段の事情があるということはできないとして,会社法22条1項の類推適用によりY社のXに対する本件預託金の返還義務を認めました。

 分割会社の事業をほぼ承継会社に承継させ,分割会社にほとんど財産が残らないのにも関らず債務が引き続き残る場合でも,分割会社の債権者となる者は債権者異議手続の対象外とされています(会社法810条1項参照)。
本判決は,分割会社の債権者となる者に一定の救済の余地を与えるものといえます。(佐藤)

  参考:最高裁平成20年6月10日判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080610112831.pdf
     会社法22条1項,810条1項

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4 相互リンク募集のお知らせ

 当事務所では,事務所名称を変更したことにともない,ホームページをリニューアルしました。

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