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Clair Law firm ニュースレター vol.170

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1 改正会社法のポイント解説(後編)

 平成26年6月20日、企業統治の在り方と親子会社に関する規律を内容とする会社法改正法案が可決成立しました。今回は、親子会社に関連した改正点につき解説します。

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1 改正会社法のポイント解説(後編)

 前回に引き続き、平成26年6月20日に可決成立した改正会社法のポイントを解説します。

 今般の会社法改正は、会社法の一部を改正する法律案の提案理由(※)を分解すると、次のようになります。

(※)http://www.moj.go.jp/content/000116475.pdf(法務省HP)

(目的1/企業統治の在り方)

  社外取締役等による株式会社の経営に対する監査等の強化

(手段)

  ・監査等委員会設置会社制度を創設

  ・社外取締役等の要件等を改める

(目的2/親子会社に関する規律)

  株式会社およびその属する企業集団の運営の一層の適正化等を図る

(手段)

  ・株式会社の完全親会社の株主による代表訴訟の制度の創設

  ・株主による組織再編等の差止請求制度の拡充

  ・その他の改正

 前回は、「目的1/企業統治の在り方」について解説しました。今回は、上記(目的2)親子会社に関連した改正点について解説します。

(1)多重代表訴訟の新設

 現行会社法は、子会社の役員等の責任を追及する株主代表訴訟を提起できる者を、当該子会社株式を直接保有する株主としています。しかし、完全親子会社間で、親会社役員と子会社役員の間に馴れ合いが生じている場合など、親会社の子会社役員に対する適切な責任追及を期待できない場合があり、従来から問題とされていました。

 そこで改正会社法は、以下の条件を全て満たす場合に、親会社の株主が、直接、子会社役員等の責任を追及する訴訟を提起できる制度を設けました。これが多重代表訴訟の制度です(改正会社法847条の3)。

ア 提訴する者が、「最終完全親会社等」の株主であって、6か月以上引き続き、総株主の議決権の1%以上の議決権を保有していること

 (「最終完全親会社」とは、子会社の全ての株式を、直接的に、または別の子会社を通じて間接的に保 有している親会社のことをいいます。)

イ 最終完全親会社等が保有する子会社株式の帳簿価格が、最終完全親会社にとって総資産の20%を超えること

ウ 子会社役員の行為によって、最終完全親会社等に損害が生じていること

エ 提訴目的が不正な利益を図るため、または会社に損害を与えるためでないこと

 企業グループ全体の内部統制の充実という観点から、本制度を創設したこと自体の意義は大きいですが、以上に掲げたように制度を利用できる場面は極めて限定的となっており(特にイの条件)、実務への影響は少ないでしょう。

 なお、同様の観点から、改正会社法では新たに、「株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するため」に必要な内部統制システム構築義務も明記されています(改正会社法348条3項4号等)。

(2)組織再編等の差止請求制度の拡充

 組織再編(合併、会社分割および株式交換・株式移転)は、会社の基礎に重大な影響を与える行為です。それにもかかわらず、現行会社法には、略式組織再編の場合に株主に差止請求を認める旨の規定しかありませんでした。

 そこで改正会社法は、全ての組織再編行為についての差止請求権を株主に認めました。

 株主は、会社が行う組織再編行為が(ア)法令・定款に違反する場合、または対価の設定が不当な場合で、(イ)株主が不利益を受けるおそれがあるときは、会社に対して組織再編行為をやめることを請求できます(改正会社法784条の2、796条の2、805条の2)。

 従来も解釈上は、全ての組織再編について株主による差止請求を認める余地がありましたが、本改正によってこれが明確に認められることとなりました。

(3)その他の改正点

 今回の会社法改正では、組織再編・親子会社に関し、他にも以下の複数の改正点があります。

A 特別支配株主の株式売渡請求

 会社が現金対価を支払って、少数株主を追い出す場合(スクイーズ・アウト)、現行会社法上は全部取得条項付種類株式を利用するのが一般的です。しかし、その場合には株主総会および種類株主総会の特別決議を経なければならず、時間と手間がかかりました。

 改正会社法では、スクイーズ・アウトに必要な時間を短縮し、手続を簡素化するため、特別支配株主の株式売渡請求の制度を創設しました。

 特別支配株主とは、会社の総株主の議決権の90%以上を保有する株主をいいます。特別支配株主は、取締役会の承認を得て、株式会社の他の株主全員から、その保有株式全部を買い取ることができます(改正会社法179条)。

 本手続では、特別支配株主が少数株主から株式を強制的に取得することができるため、少数株主が不利な地位におかれます。そのため株式会社は、手続上、通知・公告および書面備置等の情報開示義務を負います(改正会社法179条の4、179条の5)。そして少数株主は、売渡請求手続が法令に違反する場合、または対価の設定が不当な場合で、少数株主が不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に対し、株式売渡請求手続の差止請求をすることができます(改正会社法179条の7)。また事後的に、株式売渡請求手続を無効とする訴えを提起することもできます(改正会社法846条の2)。

 なお、本改正と合わせて改正会社法では、従来のスクイーズ・アウト方法である全部取得条項付種類株主の取得手続および株式併合手続についても、通知・公告、書面備置等の情報開示義務が定められ、株主の差止請求権も定められました(改正会社法171条の2以下、182条の2以下)。

B 反対株主の株式買取請求に関する規制

 組織再編等の際の反対株主の株式買取請求に関する手続に、以下の変更があります。

ア 株式買取請求に関する価格決定前の支払制度の新設

 改正会社法で株式会社は、株式買取請求手続において、株式の価格の決定があるまでに、株主に対し、公正な価格と考える額を前払いできることになりました(改正会社法786条5項等)。従来、会社は株式の価格決定があるまで株主に対し一切の対価支払ができなかったために、そこで発生する利息の支払が負担となっていましたが、本制度により解消されます。

イ 簡易組織再編・略式組織再編での株式買取請求制度の変更

 簡易組織再編では、反対株主には株式買取請求権が認められなくなり(改正会社法785条1項2号等)、また略式組織再編では、特別支配株主には株式買取請求権が認められなくなりました(改正会社法785条2項、同3項等)。

C 親会社による子会社株式の譲渡規制の新設

 親会社が子会社株式を譲渡する場合に、子会社株式の帳簿価格が親会社にとって総資産の20%を超え、かつ譲渡によって子会社の総議決権の過半数を割ってしまうときには、子会社株式の譲渡について株主総会の特別決議による承認を受けなければならないこととなりました(改正会社法467条1項)。

D 支配株主の異動を伴う募集株式の発行等に関する規制の新設

 公開会社が新たに募集株式を発行する場合には、通常、取締役会決議を必要とするのみです。しかし、募集株式の発行により、新たに総議決権数の過半数を取得する株主が登場することとなり、これに一定数の反対株主が反対した場合には、株主総会決議を経なければならないものとされました(改正会社法206条の2)。募集新株予約権発行についても同様です(改正会社法244条の2)。

E 詐害的会社分割における債権者保護規定の新設

 現行会社法のもとで、会社分割を行い採算事業のみを承継会社へ移転させて、分割会社の残存債権者を不当に害する、詐害的・濫用的会社分割の事例が問題視されていました。

改正会社法では、分割会社が残存債権者を害することを知っていた場合、残存債権者は承継会社に対して債務の履行を請求できるとする規定が新設されました(改正会社法759条4項等)。

 以上、改正会社法について2回にわたって解説しました(木村)。

参考:会社法の一部を改正する法律案(法務省HP)

     http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00151.html

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