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Clair Law firm ニュースレター vol.158

ニュースレター(アーカイブ)
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1 株主から、株主総会について、議題の提案があった場合、全てに応じなければならないか? 

 株主が会社に対して株主提案権の行使に応じるように求めて申し立てた仮処分について、保全の必要性が認められないとして、株主の申立てを認めなかった裁判例を紹介します。

2 預貯金債権の差押債権特定に関する判例のまとめ

 債権者が、債務者の預貯金債権を差し押さえる際、対象をどこまで特定しなければならないかが問題となった判例をまとめて紹介します。

3 弁護士Blog情報

 所属弁護士による最近のBlog情報を紹介します。

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1 株主から、株主総会について、議題の提案があった場合、全てに応じなければならないか?

 少数株主は取締役に対して、会社法303条、同305条に基づき、総会決議事項を会議の目的に追加すること、招集通知にその議案の要領を記載することを求めることができます。

 会社法の定める要件を満たす株主提案権が行使された場合、会社はこれに応じるべきであり、これに応じないで当該議案について決議が成立した場合には、「招集の手続」が法令に違反するものとして、総会決議取消の裁判を申し立てられる可能性もあります(会社法831条・※)。

 HOYA株式会社の少数株主は同社に対して、平成24年4月、定時株主総会において、この株主が提案した議題と議案の要領及び説明理由を、招集通知または参考書類に記載するように求めましたが、同社がこれに応じないため、東京地裁に対して、同5月、会社がこれらを行うように求める仮処分を申し立てました。

 この申立に対して、会社は、権利の濫用であり、認められるべきではないと主張をしました。

 裁判所は、この点について、「もっぱら債権者(株主)の私怨を晴らし、あるいは、特定の個人や会社を困惑させることを目的とする」ような場合、権利濫用となりうると述べたうえで、本件の提案権の行使はこれに当らないとしました。

 次に、仮処分が認められるためには、保全によって守られるべき権利(被保全権利)と保全の必要性が要件となります。

 地裁は、株主提案権は適法に行使されていると認定したうえで、被保全権利についても疎明されていると判断しましたが、本件のように権利行使を求める(現状変更を求める)断行の仮処分は、より高度の保全の必要性が要求されるところ、これが疎明されていないとして申立てを却下しました。

 この地裁決定を不服とした株主は不服申立てをしましたが、東京高裁も概ね同旨の判断をして株主の申立てを認めませんでした。

 この決定を前提とすると、株主提案が「もっぱら債権者(株主)の私怨を晴らし、あるいは、特定の個人や会社を困惑させることを目的とする」ような場合には、会社は株主提案を取り上げなくても良いということになりそうです(古田利雄)。なるほど

 

※会社が当該議案について決議しなかった場合には、取消の対象となる議案が存在しないので取消を求めることもできません。但し、取締役に対して任務懈怠に基づく責任を追及することはできます。

参考:

会社法303条、同305条、民事保全法23条2項

東京高裁平成24年5月31日決定

商事法務No.2020.86頁

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2 預貯金債権の差押債権特定に関する判例のまとめ

 金銭債権、特に預貯金債権に対する執行においては、金融機関が預金口座の内容・残存額の問い合わせに応じないため、債権者は差押債権の範囲をできるだけ広くしたいというニーズがあります。これに対して、銀行側では事務作業の便宜等の要請からこれを狭く解釈したいので、「差押債権の特定」(民事執行規則133条2項)が問題となります。

 この点について、裁判所が採用している判断基準は、「債権差押命令の送達を受けた第三債務者において、直ちにとはいえないまでも、差押えの効力が上記送達の時点で生ずることにそぐわない事態とならない程度に速やかに、かつ、確実に、差し押さえられた債権を識別することができるものでなければならない」というものです。

 第三債務者(金融機関)が速やかにかつ確実に差押債権を識別できるかを重視しているのです。

 最近の裁判例は、以下のとおりです。

 まず、「全店一括順位付方式」(全店舗を対象とし、かつ、差押えの順番は店番号の若い順によるとの方式)については、特定を欠くと判断しました。その理由として、先順位店舗の預貯金の調査等が完了しなければ、後順位店舗の預貯金に差押えの効力が生ずるか判明しないためと述べています。

 また、「預金額最大店舗指定方式」(複数の店舗に預金があれば、預金額が最大の店舗を対象とし、それが複数あるときは、店番号が最も若い店舗を対象とする方式)についても、特定を欠くと判断しました。その理由として、金融機関が預金額最大店舗を抽出する作業の困難性をあげています。

 他方、特定口座の預金債権であっても「将来預金」(債権差押命令送達日から1年が経過するまでの入金によって構成される部分)については、特定を欠くと判断しました。その理由として、金融機関は、1年間、入出金が行われる度に預金残高のうち差押債権の額を超える部分と超えない部分とを区別して把握する作業を行わなければならないが、このような作業を速やかに実現する方法がないためと述べています。 

 以上の判例から、預貯金債権差押えの際には、金融機関の店舗(支店)名を特定し、かつ、現存する部分を対象にすることが求められているといえます(柳田恭兵)。

なるほど

 

 

参考:

「全店一括順位付方式」(最高裁平成23年9月20日決定)

   http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111212160308.pdf

「預金額最大店舗指定方式」(最高裁平成25年1月17日決定)

「将来預金」(最高裁平成24年7月24日決定)

   http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121017111417.pdf

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3 弁護士Blog情報

 明けましておめでとうございます。(古田利雄)

 https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2014/01/post-36.html

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