1.「事業展開」のためのガイド―販売・パートナーシップを中心として
「事業展開」は、スタートアップの世界で最も捉えがたい用語の1つです。
スタートアップにおける共同ファウンダーには、技術系の者と、マーケティング・会計・資金調達や「事業展開」の優れた方法を見つけるための「その他の者」が必要です。創業チームはいつも、技術系の者に高値をつけますが、事業成長のために販売やパートナーシップを深めることは優先すべき事項であり、「その他の者」も重要です。
そこで、今回は早期の事業成長に欠かせない「事業展開」について、FIベイエリアのTravis Levellによるガイドを紹介します。
2.恐れは成功につながる
FIサンディエゴのメンターで、Mogl.comのCEOであるJohn Carderのブログにおいて、失敗に対する「恐れ」が、起業家にとって大切なものであると説いています。今回は、彼のブログを紹介します。
3.弁護士ブログ情報
所属弁護士による最近のブログ情報を紹介します。
1.「事業展開」のためのガイド―販売・パートナーシップを中心として
まず、「事業展開」の定義について、(特にスタートアップにおいて)広く受け入れられているものとして、Forbes誌に寄稿するScott Pollack氏による定義があります。
「事業展開とは、顧客、市場及び関係性から、組織のための長期的な価値を創出することである。」
以上の定義によれば、スタートアップにおける事業展開のための活動のうち主要なものとして、「販売」と「パートナーシップ」が重要であることがわかります。
(1)「関係性」がカギとなる
販売とパートナーシップを作る基礎となるのは、将来顧客との関係性です。
オンライン上であなたを見つけられることは、将来顧客との関係性を構築するのに役立つ最も重要なツールの1つです。
潜在的な顧客・パートナーとより良い関係性を構築するのに役立つツールとしては、以下があります。
- コンテンツ
- 推薦文/レビュー
- 個人用電子メール
- ソーシャルメディア
- ニュースレター
これらのツールを利用することは、将来顧客とのより良い関係性構築に役立つだけではなく、理想的な顧客を見つける機会を最大化するでしょう。
(2)「販売」
A.注目を集めること、優位性を生み出すこと
先程のツールのうち、コンテンツに着目してみましょう。
初期段階においては、販売のきっかけを生み出すことで、一時的にまかなっていくこととなりますが、重要なコンテンツに投資をすることは、事業展開のための最良の行動の1つといえます。
ポイントは、コンテンツのボリュームを大きくするのではなく、真に重要なコンテンツを少ない分量で作りこむことです。普通のコンテンツを多く作成しても、事業展開には効果がありません。
例えば、以下のようなコンテンツに投資すべきです。
- ニッチな分野のインフルエンサーが、リンクしたくなる・より多くの顧客に紹介したくなるようなコンテンツ。
- 訪問者が、ツイート・facebookでシェアしたくなるようなコンテンツ。
- 将来顧客が、それを読んで電話をとって製品につき尋ねたくなるようなコンテンツ。
- 潜在的顧客に、実際にニュースレターに登録してもらうか、さらにサイトを検索してもらうようなコンテンツ。
このようなコンテンツを作るのは困難であり、多くのコストがかかります。しかし、だからこそ、注目を集め、優位性を生み出すことができるのです。
B.他の誰もしないことをする/目立つ
顧客開拓を適切に行っていれば、潜在顧客が使用する製品・サービスを理解できるでしょう。そして、競合製品・サービスを使う人々を対象に、自社製品がより優れていることを示すのが、正しい販売方法といえます。
もし以下のような魅力的なセールスポイントを持っているのであれば、問題ありません。
- より安い小売市場価格
- より優れた特徴/より高度な問題の解決
- より良いUX(ユーザー・エクスペリエンス)または時間短縮
- より良いカスタマーサポート
C.理想的な顧客をターゲットにする
初期の販売において、理想的な顧客とは以下の2つの特質を持つでしょう。
- 今、あなたの問題解決のための代価を支払ってくれる
- 製品がより自らにフィットすることを望んでいる
このことは、既に製品・サービスに代価を支払い、より良いものを必要とする人々がいるのですから、難しいことではありません。
上記の達成のために、開店場所のコミュニティに伝わるようにプロモーションを絞り込むことが可能です。
例えば、製品・サービスに関するキーワードについて検索エンジン上でクリック課金型広告を実行したり、ニュースサイト上の関連コミュニティにターゲットを絞ったり、Linkedinで関連製品・サービスを用いたビジネスオーナーにターゲットを絞ったりする方法があります。
とにかく、一度理想的な顧客を想定してみれば、究極的に販売に結び付く、コンテンツ、普及活動及びマーケティングを通じて、ユニークな製品・サービスの提供を始めることができます。
D.粘り強くする
販売の80%は5回目以降の営業により成立します。あなたの仕事は、将来顧客にeメールを送り、電話し、買ってくれるか拒否されるまで接触し続けることです。
販売員のうち8~10%が売上げの80%を獲得します。なぜなら、熱心な販売員が一層進んで努力をし、5回目以降も将来顧客と話し合うからです。
E.他の全てがうまくいかない場合、基本に戻ること
もし必要な品質的優位性を生み出せていないなら、販売の基本に立ち返ってみてください。
見込みのある将来顧客に対して連絡して関係構築をし、製品に興味を持っているかもしれない人々に対し、ネットワーク構築を働きかけること、自己紹介をすることを恐れないでください。
(3)パートナーシップ
効果的なパートナーシップを開始することは、あなたのビジネスに非常に有益となり得ます。
ある価値を有するパートナーシップは、何千もの新規顧客を生み出したり、ビジネス成功のために極めて重要な役割を果たす取引関係となったりする結果をもたらします。
パートナーシップを開始する過程は、販売を行う過程に非常によく似ています。同様の持続を要しますが、自らのビジネスに完全に合うように、調整していく必要があります。
パートナーシップを開始する際に最も優先すべき事項は、ユニークな価値をプラスすることといえます。
良いパートナーシップを作るためのステップは以下の通りです。
A.時間をほとんどかけさせない
みんな多忙ですので、eメールを送る場合、文面のポイントを絞って簡潔に作成することを忘れないでください。
あまりにも多くのファウンダーが、しばしば相手を身の上話に巻き込みます。しかし実際にすべきことは、パートナーシップ関係にある将来顧客と心を開いて対話することだけです。
もし提案をとても魅力的かつ説得的に見せたいならば、働きかける最初のeメールの際、余計な内容がない方が良いです。
B.やりとりをできるだけ簡潔にする
できるかぎり、電話をかける回数、追加情報へのリンクの提供、又はあなたの会社から共働の追加提案があるかについての、やりとりが容易であればあるほど、より良いパートナーシップを形成することができます。
C.将来顧客のことを知る
前のポイントと重なるところですが、将来顧客につきより多くのことを知っていればいるほど、製品・サービスの提案がより容易になります。
D.顧客の問題解決にとってより良い提案を作る
もし将来顧客がわかっているのであれば、その相手が直面する問題を識別することができるでしょう。より大きな問題を解決できれば、よりあなたと仕事したいと熱望してくれるでしょう。
企業は、資源の効率化というプレッシャーに直面することがますます増えてくると、効率化の問題を解決してくれることを重視します。
E.会社ではなく、人に話しかける
このことは、多くの人にとっては、既知の事項に思えるかもしれません。しかし、未だにファウンダーは毎日、個人に話しかけず、会社にeメールを送信してしまっています。
F.対応しまくって、関係性を維持する
販売を行うのと同じように、5回以上は対話を重ねないと、パートナーシップを築こうとは思わないでしょう。提携を希望する会社に関係のあるあらゆる人と、関係性を深めていく必要があります。
(4)反復と成長
A.プロセスを検証する
おそらく、販売・パートナーシップを生み出すプロセスのうち最も重要な視座の1つは、行動からの学習です。プロセスを検証し、最初の顧客からフィードバックを得ることが求められているからです。
また、最初の段階で販売・パートナーシップを勝ち取ることは困難なことです。事業を継続し、ゆくゆくは規模を拡大するため、プロセスを簡素化し、改良していく必要があるからです。
eメール、プレゼン、小売市場価格、特別提供等はどうするかについて、セールスピッチを行う際には様々な視点で検証すべきです。
より良くしていくことで、あなたの会社はより充実し、成長していけるでしょう。
B.顧客・パートナーの視点からフィードバックを得る
これによって、販売をよくするため、将来顧客に対するコミュニケーションのための改善策だけでなく、現状の痛いところも発見することができるでしょう。
このことは、製品・サービスに多くのプラスとなるだけではなく、販売にもプラスになるでしょう。
また、紹介プログラムのような手法を使うことも可能です。
どのような方法を選択するにしても、新たな顧客・パートナーを得るために、その関係性にてこ入れすることを怠らないでください。
(5)まとめ
優位性を生み出す必要があるか、顧客からフィードバックを得る必要があるか、顧客と近い距離で販売を行う必要があるか否かにより、あなたにとって使える販売システムは異なります。
スタートアップ段階では、あまりにも多くの場合、販売システムを構築するプロセスは崩れ、また、販売(マーケティング)部署が他の部署と互いに反発し合ってしまいます。
このガイドがあなたのスタートアップにおける優位性・パートナーシップを構築するためのより良い視点を与える手助けとして機能すれば幸いです(柳田)。
〈参考〉The Sales and Partnerships Playbook: Your Guide to Early Growth
http://fi.co/posts/17641
2 恐れは成功につながる
FIサンディエゴのメンターであるJohn Carderが、ブログで「恐れは、起業家として成功するために必要な2つの要素:エネルギーと啓蒙を与えてくれる」と述べ、以下のように綴っています。
起業家というのは、とても孤独な職業です。起業家の頭の中には常に不安や心配がよぎっています。本当に自分はスマートだろうか?一生懸命働き続けられるだろうか?アイデアは間違っていないだろうか?チームはこれでよいか?競合他社の様子は?1年後はどうなっているだろう?万一、失敗したら・・・?など。
そんな起業家にとって必要なのは信念です。私はこれをやる、私は成功する、私は一生懸命働く、私はよいチームを作る、私は人々に愛されるプロダクトを作る、私は必ず達成する!このように、自分の意志を強く持つ必要があります。
しかしそれでも、どんなに自信に溢れている人であっても、常に恐れというものはあります。起業家は、これに向き合わなければなりません。そのコツは、恐れを利用することです。恐れをうまく利用することで、逆に、自分の夢を実現することができます。
恐れを利用するとはどういう意味でしょうか。恐れは、不安や疑い、絶望、妄想といった感情を表します。起業家に必要な能力は、恐れを認識して、それを無視するのではなく、アドバンテージとして利用することです。恐れは本能的なものであり、あなたが生き残る手助けをしてくれるものです。そして恐れは、成功のために必要な2つの要素を生み出してくれます。それはエネルギーと啓蒙です。
(1)恐れ=エネルギー
恐れは、人間の最大の動機づけです。恐れを利用して前進しましょう。アスリートや兵士が、強いプレッシャーの中で力を発揮するように、人が障害を乗り越えようとするとき、恐れは、限界を突破するエネルギーを引き出します。恐れによって、より良いパフォーマンスを発揮することができます。
(2)恐れ=啓蒙
恐れは、気づきを与えてくれます。恐れは、フォーカスすべき部分を光で照らしてくれます。恐れはどこから聞こえてくるでしょうか?恐れに耳を澄ますと、改善や理解が必要な部分を教えてくれます。多くの場合、恐れを掻き消してくれるのは知識だけです。
Carder氏のブログは、起業家は、自分のもっている恐れときちんと向き合い、受け入れて、それを乗り越えよ、と結んでいます(木村)。
〈参考〉Fear is Designed to Help You Succeed
http://fi.co/posts/909